研究課題
本研究の目的は、惑星質量を持つが、恒星を周回せず単独で存在する天体(単独惑星質量天体)や褐色矮星などの超低質量天体に着目し、環境よって誕生しやすさが異なるか、と言う問いに答えることである。平成29年度は、(1)活発な星形成が行われているへび座分子雲(高密度分子雲)、及び、(2)星形成の兆候が未だ明らかでない銀河面/高銀緯の低密度分子雲について多波長測光探査観測や分光探査観測により,特徴を調べた。(1)UKIRT望遠鏡やすばる望遠鏡を用いた近赤外測光探査観測と多波長観測アーカイブデータの解析を行った。へび座分子雲には、星雲を伴う中質量星や非常に若い原始星のほか、ガス・ダスト比の異なる高密度領域を含む3つの星団が存在する。本研究では、誕生したばかりの低質量星/褐色矮星/惑星質量天体候補が新たに約四千天体同定された。全星団において、質量が軽くなるほど誕生天体数が多く、惑星質量天体を含む初期質量関数が増加関数で表されるが、ダスト密度が大きい領域では、質量関数の増加の傾きが小さいことが明らかになった。つまり、ダスト密度により、超低質量天体の形成は異なる可能性がある。(2)UH88望遠鏡やなゆた・かなた望遠鏡による可視分光探査観測と多波長測光観測アーカイブデータの解析を行った。本年度は、銀河面を含めた低密度分子雲の解析を進め、数十の前主系列星や若い褐色矮星を新たに同定した。これらは、周囲より低温でガス・ダスト密度がやや高い領域に存在していた。若い天体の数密度や星形成効率、紫外/赤外超過(円盤保有)率などから、星形成の描像としては孤立的星形成に近く、進化が進んでいる可能性が示唆された。これらの研究成果は、昨年度までの研究成果とあわせて、日本天文学会や国際・国内会議などにおいて発表するとともに、学内外における講義や講演会、科学教室、雑誌記事やホームページなどを通じて、情報発信を行った。
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