研究課題
本研究では、地球内部マントルにおける同位体不均質の成因、程度、分布を明らかにすることを目的に、太平洋域の各造構場に産するかんらん岩のオスミウム同位体比-強親鉄性元素濃度を系統的に分析し、「ホットスポット捕獲岩」と「深海性かんらん岩、オフィオライト」の オスミウム同位体比頻度分布の系統的な違いの有無の検証とその成因解明を目指す。本年度は、データ取得に用いる「カリアスチューブ分解-同位体希釈法」の分析方法/条件と期待される確度/精度を記載した論文を国際誌に公表した。具体的には、かんらん岩の世界的標準試料 UB-N および JP-1 の粉末試料1グラムに対する繰り返し分析結果が、世界の主要実験グループの公表値と比べて遜色がないことを示し、対象試料への適用に問題がないことを明確にした。また、「ホットスポット捕獲岩」の代表的試料であるハワイ・オアフ島産かんらん岩試料の分析を実施し、現在までに得られているデータと共に解析した結果、(1)「ホットスポット捕獲岩」と「深海性かんらん岩、オフィオライト」の間にオスミウム同位体比分布に明確な違いは認められない、(2)世界四大洋のオスミウム同位体比分布にも明確な違いは認められない、ことが示された。(1)については「ホットスポット捕獲岩」のデータ数が未だ少ないことに起因する可能性が高く、更なるデータ取得が必要であるが、(2)については地球の最上部マントルが広いスケールで均質化されていることを示す重要なデータと考えられる。本研究結果については国際レルゾライト会議にて口頭発表を行い、内外の研究者と意見交換を行った。
3: やや遅れている
当初は平成26年度で研究を終了する予定だったが、粉末試料調整が難航し、試料の量や試料分解方法について再検討する必要が出てきたため、研究計画を一部変更し補助事業期間延長(1年)を申請するに至った。
本年度初めは、試料分解手法の改良を行う。具体的には、少ない試料量でもブランクの影響が極力抑えられるようにするために、分解容器の材質および形状を変更する。予察的な実験によれば、従来法で最も影響が大きかった白金のブランク値がおよそ数10分の1まで抑えられることが期待される。その後、調整した粉末試料の分析にとりかかり、年内に全てのデータ取得を完了する。一方必要が生じた場合、新たな試料の採取についても試みる予定である。
当初は平成26年度で研究を終了する予定だったが、粉末試料調整が難航し、試料分解方法について再検討する必要が出てきた。そのため研究計画を一部変更し、補助事業期間延長するのに次年度使用額が生じた。
本年度の当該助成金は、試料分解手法を一部改良するために必要となる新しい材質および形状の分解容器やその他薬品などを含む消耗品購入に使用する。また、国際会議での発表および、追加試料採取を行うための海外旅費の使用も予定している。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
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