研究課題
本研究では地球内部マントルにおける同位体不均質の程度・分布からその成因を明らかにする事を目的に、太平洋域のあらゆる造構場に産するかんらん岩-蛇紋岩のオスミウム同位体比ー強親鉄性元素濃度を系統的に分析した。具体的手法として、地球深部に由来する可能性がある「ホットスポット由来のかんらん岩捕獲岩」と浅部マントルに由来する「深海性かんらん岩、オフィオライトを構成する蛇紋岩」のオスミウム同位体比頻度分布や強親鉄性元素パターンに関する系統的差異の有無を検証した。本年度は、前年度までのデータ不足を補うためにトンガ海溝由来蛇紋岩、チリタイタオオフィオライト蛇紋岩、ミクロネシア・ポンペイ島かんらん岩捕獲岩を新たに入手し、分析を実施した。現在までに得られたデータを含めた解析の結果、深部由来のかんらん岩捕獲岩と全部由来の蛇紋岩との間に、強親鉄性元素パターンやオスミウム同位体比頻度分布に明瞭な違いが認められないことが判明した。これらの結果から、(1)地球の対流マントルほぼ全域が広いスケールで均質化されている、(2)細かいスケールでは原生代融解イベントに伴う同位体不均質が保持されている、(3)太古代以前の融解イベントにより形成された不均質性や金属核との反応を経験したマントルは存在しない、といった可能性が強く示唆された。これらの結果と考察について、アメリカ地球物理学連合で招待講演を行い、内外の研究者と意見交換をした。また今夏、日本で開かれるゴールドシュミット国際会議で新規データを含めた最終結果を発表し、その後論文として公表する予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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