平成26年度の研究計画は、平成25年度に合成した重合性官能基を導入したセシウム及びストロンチウム選択抽出能を有するクラウンエーテル(CE)を用い、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPA)と共重合させることにより、CEを架橋剤としたCE-NIPAゲルを合成し、ゲル液抽出試験を行いCE-NIPAゲルの抽出性能を評価することであった。また、多孔質シリカゲル表面上でCE-NIPAゲルを合成し、シリカゲルにゲルを薄く担持させる手法を確立させ、抽出実験を行い、カラムクロマトグラフィーの充填剤としての使用を検討することであった。 実際には、平成25年度に合成した重合性官能基を導入した化合物及び、新たに重合性官能基の構造が異なる化合物、CE骨格の構造が異なる化合物を有機化学合成により合成した。合成した抽出剤のNMRや赤外分光を測定し、化合物の構造を同定した。得られた抽出剤を用いてNIPAと共重合を行い、CE-NIPAゲルを得ることに成功した。このゲルを用いて、硝酸水溶液中からのストロンチウム抽出試験を行い、ゲルがストロンチウム吸着性能を有することを確認した。またNIPAゲルは感温性があるため、吸着性能の温度依存性を調べたところ、約30℃以下の膨潤状態で吸着量が増加し、30℃以上の収縮状態で吸着量が減少する現象を確かめた。さらに多孔質シリカゲル表面上でのNIPAゲルの合成を行った。ゲルのシリカゲルへの薄膜塗布に成功し、カラムクロマトグラフィーの充填剤としての使用の可能性を示唆することができた。
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