研究課題/領域番号 |
25870358
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉田 一樹 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30517470)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 疲労 |
研究概要 |
オーステナイト系ステンレスでのSUS316、マルテンサイト系ステンレスのSUS410について格子欠陥と応力振幅一定条件での疲労特性の関係を調査した。同一試験片による疲労試験材について陽電子寿命の連続測定を行い、疲労回数と陽電子寿命測定の関係について調査を行った。その結果、疲労初期に多量の格子欠陥が導入されること、その後破断までの格子欠陥量の変化は疲労初期と比較すると非常に小さいことが分かった。これらのことから格子欠陥の観点から材料が疲労損傷を受け破断に至るメカニズムを解明するためには、格子欠陥密度の変化を高精度に捉える必要があることが判明した。そこで、より高精度で格子欠陥密度の変化を捉えるため、SUS316に対して新たに疲労試験途中止め材を作製し、陽電子寿命測定を行った。陽電子寿命スペクトルの多成分解析の結果、疲労のごく初期に転位と単空孔、空孔クラスターが導入され、その後破断までは転位密度は大きく変化せず、空孔のクラスター化が進行していることが分かった。また疲労過程でのひずみ振幅の変化は格子欠陥密度の変化に対応していることが分かった。これは疲労初期における可動転位の導入によりひずみ振幅が増大し、その後の疲労過程で転位の再配列により硬化し、ひずみ振幅が減少したためと考えられる。これらの結果から疲労過程では転位だけではなく、単空孔や空孔クラスターが導入されることが明らかになった。また疲労過程では空孔クラスターサイズの増大が見られており、疲労損傷度の評価の指標として用いることが出来る可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
陽電子寿命法では、測定により得られた陽電子寿命スペクトルの解析によって、格子欠陥種の同定と密度の決定が可能である。しかし先行研究例が乏しく、実験で観測されたそれぞれの寿命成分の欠陥種の特定を行うために別途検証実験を行う必要性が生じたため、H25年度実施予定の疲労前の空孔密度と疲労寿命の関係については検証できなかった。しかしH26年度実施予定の疲労過程における格子欠陥密度の変化の調査については前倒しで達成している。また鉄鋼協会で本研究成果について発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は疲労前の空孔密度と疲労寿命の関係について検証を行う。予歪材や疲労中断後焼鈍材について疲労破断回数と疲労過程における格子欠陥密度の変化を調査し、空孔が疲労寿命に与える影響について調査する。
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