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2014 年度 実施状況報告書

線維芽細胞増殖因子(FGF)の新規薬理作用としての抗うつ効果発現機序の解析

研究課題

研究課題/領域番号 25870461
研究機関広島大学

研究代表者

中島 一恵(久岡一恵)  広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 助教 (20393431)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード抗うつ薬 / 薬理学 / グリア
研究実績の概要

近年、うつ病患者の死後脳において線維芽細胞増殖因子(Fibroblast growth factor;FGF)リガンドとFGF受容体が低下し、抗うつ薬治療により回復したとの報告がなされたことから、抗うつ薬の治療効果とFGF受容体シグナル伝達系との関連が注目されている。本研究は、現在臨床で使用されている抗うつ薬の新たなターゲットとして、アストログリア細胞におけるFGF受容体シグナル伝達系に着目し、抗うつ薬によるFGF受容体シグナル伝達系の活性化がいかにして制御されるか、および抗うつ薬処置によるFGFリガンド(FGF2)の発現メカニズムを明らかとすることを目的として行った。本年度は以下のような成果を得た。
1、アストログリア細胞(ラット大脳皮質初代培養アストロサイト、ラットアストログリア由来C6細胞)において、三環系抗うつ薬アミトリプチリン処置によるFGF受容体シグナル伝達系の活性化をウエスタン法により検出した。Gタンパクサブタイプ(Gs, Gi/o, Gq)にそれぞれ選択的な阻害薬を用いて、アミトリプチリンによるFGF受容体シグナル活性化にはGi/oが関与する可能性が示唆された。
2、アストログリア細胞に発現しているGi/oタンパクサブタイプに特異的なsiRNAを用いて、アミトリプチリンによるFGF受容体シグナル活性化にはGo, Gi3が関与することが示された。
3、CellKeyシステム(Molecular Devices社)を用いて、アストログリア細胞におけるアミトリプチリン処置によるGi/oタンパクの活性化を検出した。
4、ラット大脳皮質初代培養アストロサイトにおいて、アミトリプチリン処置によるFGF2産生にはERKの活性化を介する転写因子EGR1の生合成が必要であることが示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

アミトリプチリン処置によるアストログリア細胞のFGF受容体シグナル伝達系活性化機構におけるGi/oタンパクの関与に関する研究成果については、査読付学術誌に受理された。アミトリプチリン処置によるFGF2産生機構に関する研究成果は、論文にまとめて査読付学術誌に投稿中である。

今後の研究の推進方策

今年度の研究結果から、アストログリア細胞において、アミトリプチリンによるFGF受容体シグナル伝達系の活性化にはGi/oタンパクの活性化が重要な役割を果たす可能性が示唆された。来年度はアミトリプチリン以外の抗うつ薬処置により、アストログリア細胞におけるGi/oタンパク活性化が誘導されるかCellKeyシステムを用いて検討し、アミトリプチリンによるGi/oタンパクの活性化はアミトリプチリン特有の作用なのか、抗うつ薬全般に認められる作用なのか確認する。Gi/oタンパク活性化薬(マストパラン、compound48/80など)を用いて直接的にGi/oを活性化することで、アストログリア細胞においてFGF受容体シグナル伝達系が活性化されるか検証する。
アミトリプチリン処置によるFGF2産生機構におけるERKより上流のメカニズムについて、選択的阻害薬やsiRNAを用いて解明する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Tricyclic antidepressant amitriptyline-induced glial cell line-derived neurotrophic factor production involves pertussis toxin-sensitive Gαi/o activation in astroglial cells.2015

    • 著者名/発表者名
      Hisaoka-Nakashima K, Miyano K, Matsumoto C, Kajitani N, Abe H, Okada-Tsuchioka M, Yokoyama A, Uezono Y, Morioka N, Nakata Y, Takebayashi M
    • 雑誌名

      J Biol Chem.

      巻: in press ページ: in press

    • DOI

      10.1074/jbc.M114.622415

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] グリアと抗うつ薬2014

    • 著者名/発表者名
      中島一恵、森岡徳光、仲田義啓、竹林実
    • 雑誌名

      分子精神医学

      巻: 14 ページ: 9-14

  • [雑誌論文] History of the G Protein-Coupled Receptor (GPCR) Assays From Traditional to a State-of-the-Art Biosensor Assay2014

    • 著者名/発表者名
      Miyano K, Sudo Y, Yokoyama A, Hisaoka-Nakashima K, Morioka N, Takebayashi M, Nakata Y, Higami Y, Uezono Y
    • 雑誌名

      J Pharmacol Sci.

      巻: 126 ページ: 302-309

    • DOI

      10.1254/jphs.14R13CP

    • 査読あり
  • [学会発表] Tricyclic antidepressant amitriptyline acts on astrocytes leading to the increase in the FGF2 expression: A role of early growth response 1 signaling2014

    • 著者名/発表者名
      N. KAJITANI, K. HISAOKA, M. OKADA-TSUCHIOKA, M. HOSOI, C. SHIBASAKI, N. MORIOKA, Y. NAKATA, M. TAKEBAYASHI
    • 学会等名
      44th Annual Meeting of Society for Neuroscience
    • 発表場所
      Washington DC (USA)
    • 年月日
      2014-11-17
  • [学会発表] ラット初代培養ミクログリアにおいて三環系抗うつ薬アミトリプチリンが脳由来神経栄養因子(BDNF)mRNA 発現に及ぼす効果の検討2014

    • 著者名/発表者名
      重藤 貴大、中島 一恵、梶谷 直人、竹林 実、森岡 徳光、仲田 義啓
    • 学会等名
      第53回日本薬学会・日本薬剤師会・日本病院薬剤師会中国四国支部学術大会
    • 発表場所
      広島(広島国際会議場)
    • 年月日
      2014-11-08
  • [学会発表] 7)アミトリプチリンによるグリア細胞株由来神経栄養因子産生メカニズムの解明:マトリックスメタロプロテアーゼの関与2014

    • 著者名/発表者名
      安部 裕美、中島 一恵、岡田 麻美、梶谷 直人、板垣 圭、森岡 徳光、竹林 実、仲田 義啓
    • 学会等名
      第53回日本薬学会・日本薬剤師会・日本病院薬剤師会中国四国支部学術大会
    • 発表場所
      広島(広島国際会議場)
    • 年月日
      2014-11-08
  • [学会発表] ラット初代培養ミクログリアにおける脳由来神経栄養因子(BDNF)発現に対する三環系抗うつ薬アミトリプチリンの影響2014

    • 著者名/発表者名
      重藤貴大、中島一恵、梶谷直人、竹林 実、森岡徳光、仲田義啓
    • 学会等名
      第125回日本薬理学会近畿部会
    • 発表場所
      岡山(岡山コンベンションセンター)
    • 年月日
      2014-06-20

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公開日: 2016-06-01  

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