海馬は記憶や空間認知を司る重要な脳組織であるが、歯状回顆粒細胞がこれらの高次脳機能を担っている。以前我々は、軸索ガイダンス分子であるドラキシンを同定し、海馬形成に必須であることを明らかにした。ドラキシン遺伝子破壊マウスでは、死細胞が増加するとともに海馬が萎縮し、海馬機能にも異常をきたす。今回我々は、海馬神経新生におけるドラキシンの役割について解明を試み、以下の結論を得た。(1)ドラキシンはその受容体であるDCCを介し、新生神経細胞の分化の過程で起こり得る細胞死を抑制する、(2)強力な分化誘導能を有するWntの活性を減弱し、神経細胞の分化が適切な速度で進行するよう調節する。
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