開発援助や都市輸出、パッケージ型インフラ輸出は、先進国側の国内産業の成長を促進するとともに、開発途上国の低炭素化社会への構築に貢献することができる。本研究では、先進国の開発途上国への都市輸出やパッケージ型インフラ輸出による温室効果ガス(GHG)削減効果を定量的に評価し、低炭素型社会を促進するための効果的な処方について検証することを目的としている。具体的には、日本の政府開発援助で実施されたインフラ事業を対象に、温室効果ガスの削減量を定量評価したうえで、事業毎の日本の貢献分について推計した。その結果、1)火力発電施設建設でも、効率改善によるGHG削減効果が大きい、2)交通分野は道路輸送から鉄道輸送へとシフトさせるモーダルシフトのGHG削減効果は大きいため、輸送需要が増加する途上国では有効である事が示された。ただし、交通構造の変化と、燃料転換による排出構造を考慮してしなければ、排出量は増加する。例えば、バスの割合が大きい道路輸送から電車に移行する場合、電車の電源である火力発電の効率が悪い場合は、かえってGHG排出量が増える場合があることが明らかとなった。そのため、セクター別ではなく、川上から川下までの総合的なインフラデザインが重要であることを示した。 また、本研究を遂行する中で、低炭素型都市や環境配慮型都市づくりを推進している、東京都、北九州市、横浜市などの環境先進都市を対象に、都市化の進展による社会経済状況、資源エネルギー需給構造、インフラ整備状況の変化および温室効果ガス排出構造、各都市が取り組んできた環境政策について、都市レベルでの長期データベースを作成した。今後は、本研究の発展型として、日本の都市開発や低炭素開発の時系列毎の特徴を明らかにしたうえで、途上国の発展段階別に、環境配慮型の都市開発のためのインフラ整備のあり方について提示していきたい。
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