研究課題/領域番号 |
25870897
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
二村 太郎 同志社大学, グローバル地域文化学部, 助教 (50580817)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ローカルフード / 都市農業 / アメリカ合衆国 / デトロイト / ポートランド |
研究実績の概要 |
本研究は、アメリカ合衆国においてローカルフードを入手する場であるファーマーズマーケット(農産物直売市場)と地域社会の関係の重層性を、連邦・州・都市(郡)およびコミュニティ・レベルでのマルチ・スケールで解明することを目指す。アメリカのファーマーズマーケットはこの十数年で全国的に急増し、多くの都市で開催されるようになり、地域社会に着実に定着しつつある。本研究はファーマーズマーケットと地域社会の結びつきを解明することにより、アメリカ社会における安定的な食料供給および食を通じた社会正義の追求の持続可能性を明らかにすることを目的とする。
平成26年度は夏期にミシガン州デトロイト市内で現地調査を行い、様々なファーマーズマーケットにおいて聞き取り調査を行った。その結果、デトロイトでは環境系NPOが立ち上げた都市農業支援プログラムが急速に人気を博し、デトロイト市内の各地で主に野菜を育てる活動が展開したことが明らかになった。現在このプログラムに加入する会員は1000人を超え、デトロイト市内で農産物が育てられている土地は140エーカー(約56ヘクタール)に達する。他方で、農業用に利用できる土地は確保しても、農作業に従事する人員が少なく、労働力確保の面では必ずしも安定的ではない。そのため、事業推進者が論じるような「都市農業でデトロイトを養う」といった規模の実践までには至らないであろうと考察した。
また、冬期にはオレゴン州ポートランドとカリフォルニア州オークランドにて現地調査を行った。ポートランドは市内に位置する大学の敷地付近を中心として大規模なファーマーズマーケットが展開し、今も増加傾向にある。逆にオークランドはファーマーズマーケットの規模が小さく、一部にみられる都市農業も再開発の影響を受けやすい地域にあり、デトロイトに比べて農地へのアクセスをめぐるせめぎ合いが遥かに強いことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2014年に学内の別組織へ転籍してから、本研究課題を申請した当時の想定をはるかに超える学内業務を負担することとなり、予定していただけの現地調査が十分行えなかった。これは資料調査などに重点をおきつつ、最終年で挽回していきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は前年にも増して学内での業務が増えたため、前年に引き続きじっくり現地調査に費やす時間が限られることが予想される。そのため、現地調査を効率良く実施することに配慮するとともに、文献・資料の分析に重点を置いて、問題点の整理に務める。最終年度となる本年は、ローカルフード運動が展開するアメリカ合衆国においてファーマーズマーケットおよび都市農業が抱える抜本的な課題を明らかにしていきたい。
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