2015年度は合衆国中西部の二州都にて夏期に調査を行った。ウィスコンシン州州都マディソンで開催されるファーマーズマーケット(以下、FMと略)は、州議会議事堂を取り巻く四辺の道路沿いに店舗が出店し、出店者数も100を超えていた。ここでは毎回先着順に出店スポットを埋めていくことで、消費者が歩き回りながら様々な出店者と触れあう仕掛けになっていた。また、出店者資格に厳密な地理的範囲は定めていないものの、基本的には販売出店者=農業者となっており、転売中心の出店者は認めていなかった。他方で、出店者にとってFMは重要な販売先であると同時に、新たな販路開拓のきっかけにもなっていることが明らかになった。 ミネソタ州の双子都市では両都市でFMが開催されていたが、それらの性格は大きく異なっていた。ミネアポリスFMは転売専門の出店者も多く、カリフォルニア産のラズベリーなども販売されていた。また、同州にはかつてインドシナ難民が移住したことから、多くの東南アジア系出店者による農産物の販売が見られた。他方で、セントポールFMは明確に「販売出店者=農業者」であることをルールとしており、それぞれがこだわりの商品を販売していた。これらの結果、地理的に近接するFMでも出店者資格の規定や販売品などで明確な差異がみられることが明らかになった。 また、年度末にワシントンDCにて短期間の調査を行った。農務省図書館で収集した資料の管見では、合衆国各地で開催されるFMに対して連邦政府は法的支援はほとんど行われてこなかった。また、持続的農業を支援するNPOで聞き取り調査をしたところ、彼らが議会に働きかける政策提言ではFM自体への支援よりも、持続的農業の実践と安全な農産物を普及することへ力点が置かれていた。このことがひいては各地でのFMの活性化やローカルフードの定着に一層大きな意味を持つ、という大局的な視点から将来展望を描いていることが明らかになった。
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