研究課題/領域番号 |
25870931
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
加戸 陽子 関西大学, 文学部, 准教授 (10434820)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害 / 広汎性発達障害 / 注意欠陥/多動性障害 / 神経心理学的検査 / ウィスコンシンカード分類テスト / 実行機能 |
研究実績の概要 |
本研究は自閉症スペクトラム障害(ASD)/広汎性発達障害(PDD)や注意欠如/多動性障害(AD/HD)およびその両者をともなう子ども(併存例)の各種神経心理学的検査による認知特性の検討を目的とする。本年度は以下の5点について検討を行った。 ①ウィスコンシンカード分類テスト(KWCST)による併存例の実行機能を年齢群別に検討した結果、年少群ではASD/PDD、AD/HDと同等の成績であったのに比し、年長群では良好な成績を認め、この背景要因に関する検討の必要性が考えられた。②発達障害群(ASD/PDD、AD/HD、併存例)のKWCSTとWISC-Ⅲの成績との関連性を年齢群別に検討した。年少群は年長群に比して多くの実行機能と知能検査成績との間に相関を認め、年少群は実行機能と知能検査の両者の課題解決に共通した能力を用い、年長群ではそれぞれ異なる能力によって課題解決を図っている可能性が推測された。③5-14歳のAD/HDのKWCST成績とChild Behavior Checklist(CBCL)得点との関連を検討した結果、多くの指標間で有意な相関を認め、CBCLにより評価される様々な行動および情緒面での問題が、実行機能における不十分な成績の結果として出現するか、またはその原因となることが示唆された。④発達障害群(ASD/PDD、AD/HD、併存群:全群男児)を対象に、CBCL得点を年齢群別に比較した結果、併存群は単独群に比べ行動や情緒の問題が多く、年長群は攻撃的行動を除く全症状尺度において得点が高く示され、学童期後半以降も継続した支援の必要性が示された。⑤学習面に困難を抱える各種発達障害児10名を対象にWISC-Ⅲ/WISC-IVおよびRey-Osterrieth複雑図形検査(ROCF)を適用した結果、学習障害をともなわないPDDや併存例で知能検査の知覚統合や知覚推理の下位検査得点が良好であっても、ROCFの構成力や描画過程に困難を認め、学習困難の背景要因を検討する上で視覚情報処理過程の把握も重要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は昨年度に引き続き、ASD/PDD、AD/HD、併存例を対象に、知能検査および神経心理学的検査を実施し、データの集積とその分析および学術集会での経過報告を行った。データの分析として、年齢群別、障害群別に各種心理検査に見られる成績の比較や、臨床群における各種心理検査間での評価機能の関連性、各種心理検査成績と行動尺度得点間の関連性に関する検討を行っている。なお、昨年度と同様に、DSM-IV・DSM-Vのいずれの場合で診断されたかに関わらず対象に含めることとし、知能指数や併存症状、服薬状況の統制を優先して検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き各種発達障害を対象に、知能検査および神経心理学的検査を行い、データの集積および分析を行っていく。知能検査に関してはこれまでにWISC-IVと各種神経心理検査との関連性について十分な検討がなされていないことから、引き続きこの点に関する検討も行っていく。なお、先述のようにDSM-IVからDSM-Vへの診断基準変更の過渡期にあることにより、新しい診断基準を主とした十分なデータの集積にもとづく分析は難しいことが予測され、主に前項に記載したような知能指数や併存症状、服薬状況の統制を優先した認知特性の検討を行っていく予定である。
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