診断基準の改訂により、DSM-5では自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder: ASD)が注意欠如/多動障害(attention-deficit/hyperactivity disorder: ADHD)と併存する例があることが認められるようになった。そこで、本研究では実行機能検査の1つであるKeio版Wisconsin card sorting test(KWCST)を用いて、5-15歳のASDとAD/HDの併存例43例、ASD69例および定型発達児(typically developed: TD)69例を対象に、5-9歳(年少群)および10-15歳(年長群)の2つの年齢群に分けて実行機能への併存症状の影響について検討を行った。 まず、年齢群別比較の結果、年少群ではKWCSTの第2段階において両臨床群がTD群に比して多くの指標で有意に低値を示した。年長群では、ASD群はTD群に比して第2段階で有意に低値を示したが、併存群は両段階でTD群との間に有意差を認めなかった。なお、両年長臨床群のいくつかの指標成績は、第2段階の年長TD群の平均値に匹敵していた。 次に、臨床群間の認知的差異に関し、年少併存群は第2段階でNUCAに低値を示したが、年長ASD群は第1段階のCAおよびPENにおいて低値を示した。 最後に、第2段階での成績改善の程度については、年長群は有意な群間差を示さなかったが、年少ASD群はTD群に比べて改善が不十分であった。 本研究の結果、年少の併存例は注意や記憶の持続が不十分であり、年長ASDは認知的柔軟性の点で困難がみられたが、臨床群にみられた実行機能の差異は年少から年長にかけて追いつきの成熟によって減弱するものと考えられた。
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