研究課題/領域番号 |
25871129
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
遠藤 充浩 独立行政法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 研究員 (40391883)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヒストン修飾 / クロマチン / 転写 / 胚性幹細胞 / 発生 / 分化 / 減数分裂 |
研究概要 |
ヒストンH2Aに対するモノユビキチン化酵素活性を有するポリコーム群遺伝子産物Ring1A/Bが、標的遺伝子をどのように認識して結合するかを明らかにするため、Ring1A/Bと結合してPRC1複合体を形成するMel18/Bmi1(Pcgf2/4)、Ring1A/Bと結合して固有の複合体を形成するMBLR(Pcgf6)のそれぞれを欠損したES細胞を準備し、Ring1Bの標的遺伝子への結合状態をChIP-seqの手法で調べた。野生型ES細胞においてMel18は数多くの発生関連遺伝子へRing1Bと共に結合しており、Mel18/Bmi1重欠損ES細胞では、これらMel18結合遺伝子へのRing1B結合レベルが大きく低下していることが分かった。一方、MBLRは減数分裂に関連する遺伝子の転写開始点周辺へRing1Bと共に結合し、MBLRをコンディショナルに欠損させると、これらMBLR結合遺伝子におけるRing1B結合とH2Aモノユビキチン化修飾が殆ど消失することが分かった。さらに、ヒストンH3の27番目のリジン残基のトリメチル化修飾(H3K27me3)を行う活性を有するPRC2複合体を欠損させたES細胞 (Eed欠損ES細胞)において同様の解析を行った結果、PRC2欠損によりMel18結合遺伝子へのRing1B結合レベルが低下する一方で、MBLR結合遺伝子へのRing1B結合は影響を受けないことが分かった。以上の結果から、Ring1Bをリクルートする仕組みとしてPRC2-PRC1経路とMBLR経路の少なくとも2通りが存在し、それぞれ固有の標的遺伝子を制御していることが明らかになった。Ring1Bを包含するいわゆるPRC1タイプのポリコーム複合体による標的遺伝子の認識は、これまでPRC2が行うH3K27me3修飾に依存するとされてきたが、本研究によりPRC2非依存性の新規の仕組みの存在が明確になった。今後、MBLR複合体が標的遺伝子配列を認識する分子機構の詳細とその生物学的意義の解明を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、ヒストンH2Aのユビキチン化酵素活性を持つポリコーム群遺伝子産物Ring1A/Bの局在や活性を制御する仕組みの解明を目的としており、Mel18/Bmi1とMBLRの役割に注目した昨年度の研究により新規の分子機構の存在を明らかにすることができた。よって本研究はおおむね順調に進展しており、本年度の研究によりその分子機構の詳細についてさらなる解明が見込める状況である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の解析の続きを行うとともに、PRC1複合体の構成因子Cbx2/4/7/8の重欠損ES細胞や、MBLR複合体の構成因子Max/Mgaの欠損ES細胞を準備し、Ring1A/Bを標的遺伝子へリクルートする分子機構の全容解明を目指す。また、モノユビキチン化ヒストンH2Aに結合するタンパク質の同定を行い、モノユビキチン化ヒストンH2Aを介するシステムによる遺伝子発現制御の分子機構の解明を目指す。
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