本研究は、18世紀イギリスにおける陸軍兵士とその家族の実像を明らかにすることを目的とする。イングランド内の3つの教区の「定住資格審査記録」に現れる兵士に関して、①入隊前の職業、②識字能力と不動産賃借、③入隊の背景、④市民社会への復帰の4点を分析した結果、彼らの大半がごく一般的な中下層の民衆であることが明らかとなった。また彼らの妻についても、親族関係や結婚前の職業を検討することにより、同様の結論が得られた。こうした分析結果は、軍隊と市民社会の間に活発な人的循環が保たれていたことを示すものであり、18世紀における兵員確保のメカニズムを人の移動という観点から解明する重要な成果であると言える。
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