本研究では、ローマ字本キリシタン資料の拗音節に見られる子音の偏在的分布に関する音声学的知見を以て、(1)奈良時代の上代特殊仮名遣いイ列・エ列にもこれらと類似した子音の偏在的分布が見られる要因は何か、(2)日本語動詞の活用という形態論的側面にも子音の偏った分布が確認されるのか否か、(3)硬口蓋化以外にアクセントもキリシタン資料に関与しているのか否かについて検討した。 結果、(1)には硬口蓋化子音の通時的・通言語的特性が影響していると推定されること、(2)には動詞の活用という形態論的側面においても子音の偏在性が認められること、(3)キリシタン資料にもアクセントの反映が一部あることが明らかになった。
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