アメリカの黒人文学は、人種問題を主題とする文学の総体であると考えられてきた。近年、しかしながら、必ずしも人種問題に言及することのない作品を残してきた黒人作家も少なからず存在しているという事実に、新たなる関心が向けられ始めている。 本研究は、白人/黒人という人種的二項対立の思考法に必ずしも囚われることのない黒人文学作品の美学的・政治的価値を再検証した。その目的は、黒人文学の主題やジャンルの多様性を示すことにあった。ハーレム・ルネサンス以降の時代に焦点を当て、人種に囚われることのないコスモポリタンなスタイルを持つ作品、登場人物の人種的アイデンティティを明らかにすることのない恋愛詩などを再読した。
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