本研究では、西域北道のクチャ・カラシャール・トルファン地域周辺の石窟に見られる誓願図とその関連作例に関するデータを収集し、主題内容、意味機能、年代の考察を行った。とりわけ、トルファン地域のウイグル時代仏教美術を代表する大画面誓願図の形式に注目し、そのプロトタイプと目されるクチャ地域の作例について重点的に検討した。その結果、大画面誓願図の形式は遅くとも7世紀までにクチャの中心柱窟の後廊において出現していたこと、初期には誓願図以外の主題と一連のものとしてあらわされ、「再生の記説」としての側面が重視されていたことを明らかにし、ウイグル時代に定型化されていく過程を跡づけた。
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