従来,分子雲におけるオルソ水素分子の存在度の比率が高く,その値は不変とされてきたが,近年の研究で氷星間塵上において水素分子のオルソ・パラ転換が起こることが示唆された.しかし,その詳細は未解明であり,氷星間塵上での水素分子のオルソ・パラ転換の確率およびメカニズムを定量的に明らかにすることを本研究の目的とした. 本研究を遂行するための装置開発を行った.真空チャンバー内に設置したアルミ基板が極低温(5 K程度)まで下がることを確認し,その上にH2Oガスを蒸着させ擬似星間塵としてのアモルファス氷を作製した.オルソ・パラそれぞれの水素分子の存在度を定量的に調べるために,水素分子の回転状態を共鳴多光子イオン化法および飛行時間型質量分析法を用いて計測した.予備実験として,水素ガスをリークバルブから真空チャンバー内に導入し,各回転状態の水素分子を計測した.良く定義した状態下で水素分子と氷の相互作用を調べるために,水素分子線源の開発を行い,水素分子線が生成できたことを確認した.
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