研究実績の概要 |
平成26年度にはまず,前年度に行っていたラプラシアンの固有値の漸近挙動とラプラシアンのベキ乗のDixmierトレースの関係についての研究の発展として,領域の境界における面積分の概念を適切な作用素のDixmierトレースとして作用素論的に記述することができる,という事実の証明を完成させた.この結果については平成26年8月に関西大学で開催された国際研究集会``Stochastic Processes, Analysis and Mathematical Physics"や同10月にDresden工科大学で開催された国際研究集会``Workshop on Dirichlet Forms & Stochastic Analysis 2014"での講演をはじめとして各地で研究発表や議論を行った. 測度論的リーマン構造については,N-polygasketの場合には予想される結論の証明の方針に見当はついていたものの証明の完成は適わなかった.その他の場合については平成27年2月にOxford大学とBielefeld大学を訪問し議論を行うなど,3次元以上の高次元標準Sierpinski gasketの場合を中心に一定の理解が得られるよう検討を重ねたが,具体的な課題の解決には至らなかった. なお,Klein群論や双曲幾何学との関連で重要な例として,最大接触円の詰め込みを繰り返すことで得られるApollonian gasketと呼ばれるフラクタルがある.これについてはあるDirichlet形式の下での測度論的リーマン構造とみなせるというTeplyaev (2004)の結果があり,筆者は本研究課題申請時点では詳細を把握できていなかったが,最近この結果を精査し具体的な状況を理解することに成功した.まだ論文にできるような研究結果には至っていないが,近いうちに研究成果を挙げられるものと期待している.
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