研究課題/領域番号 |
25890021
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
横井 紀彦 生理学研究所, 細胞器官研究系, 特任助教 (50710969)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | てんかん / シナプス伝達 / シナプス / 構造病 / 分泌蛋白質 / 変異体 / PSD-95 / 蛋白質複合体 |
研究概要 |
LGI1は、ヒトでてんかんを引き起こす30以上の変異体が報告され、また、辺縁系脳炎を引き起こす自己抗体の主要な標的であることが知られている。これまでに我々は、LGI1ノックアウト(KO)マウスが生後三週間以内にてんかん発作により全て死亡すること、LGI1がシナプス膜貫通蛋白質ADAM22、ADAM23と複合体を形成すること、そして、AMPA型グルタミン酸受容体の機能制御を行うことを見出してきた。しかしながら、LGI1の機能阻害とてんかん、辺縁系脳炎発症の分子病態メカニズムの関連は未だ明らかではなかった。申請者はヒトでてんかんを引き起こすLGI1の分泌型変異体と分泌阻害型変異体をそれぞれ発現するトランスジェニックマウスを作成し、これらLGI1変異体のヘテロ接合型マウスが、ヒトのてんかんモデルマウスとなることを見出した。さらに、マウス脳内でのLGI1変異体の機能欠損を生化学的、組織化学的に調査した結果、LGI1の変異によって引き起こされるてんかんが、分泌不全、ADAM22との蛋白質間相互作用不全を原因とする構造病(conformational disease)であることを示した。当該年度では、LGI1の構造異常を回復すると期待される試薬群を調査し、てんかんモデルマウスの痙攣症状を緩和することを見出した。また、我々はヒトで辺縁系脳炎を引き起こすLGI1自己抗体がLGI1とADAM22の結合を阻害することを報告した。つまり、これら結果を合わせて、LGI1/ADAM22による脳の興奮性シナプス伝達制御機構の重要性を示すことができた。現在、LGI1/ADAM22結合が機能するシナプス回路の同定と、その下流のシナプス伝達制御機構について調査を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
LGI1分泌不全を解消する小分子の探索を行い、候補分子による生理的な効果を見出しつつあるため。 ADAM22の翻訳後修飾を評価する実験系の確立を行ったため。 LGI1の責任回路を探索を以下のように行った。まず、細胞種特異的にLGI1を発現させるトランスジェニックマウスを作成し、それらマウスの掛け合わせにより、特異的な細胞種のみにLGI1を発現するマウスを作製した。そのLGI1の細胞種特異的な発現により、LGI1 KOマウスのけいれんがレスキューされるか検討を行っている。当該年度に於いて、複数の細胞種にLGI1を発現させるとことで、LGI1 KOマウスの寿命が飛躍的に改善されることを見出し、今後の生化学的、組織化学的、電気生理学的実験の足がかりを得た。
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今後の研究の推進方策 |
我々が作製したヒトてんかんモデルマウスに対して、LGI1の構造異常を回復させる試薬を投与し、てんかん症状の回復傾向を評価することで、新たなてんかん治療法の提案を行う。 LGI1/ADAM22結合の下流のシナプス伝達制御システムに関して、ADAM22の翻訳後修飾と、ADAM22とPSD-95との相互作用に着目し、生化学的、細胞生物学的に解析を進める。 LGI1の責任回路を探索するため、引き続きマウスを用いたレスキュー実験を進める。さらに絞られた回路でのLGI1の機能を抽出するため、LGI1との結合蛋白質や結合蛋白質の翻訳後修飾を調査する。
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