研究課題/領域番号 |
25893082
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
古橋 一憲 福井大学, 医学部附属病院, 医員 (30711840)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 歯学 / 細胞 / 3次元培養 / in vitro / 歯科インプラント |
研究概要 |
デンタルインプラントでは口腔粘膜との接着は一般的になく、現在のインプラントの原理的な欠陥として、未解決なままである。本研究では、in vitro下で材料-上皮組織間の封鎖性を評価する方法としてヒト上皮3次元培養組織モデルを利用し、シミュレーション試験を行った。 材料として、ナノアパタイト(nHAp)が表面に修飾されたPET板(nHAp/PET)、未処理PET、純Ti、ジルコニアを使用した。新生児表皮角化前駆細胞をMillicell PCF膜 Insert dishに播種し、高Ca濃度培地にて、3次元分化誘導を行った。その際、各プレートをPCF膜に接するように垂直に設置し、気液界面下で15日間の培養を行い、3次元上皮モデルを構築した。培養終了後、通法に従って標本を作製し、組織学的観察を行った。 nHApはSEM像より40-100nmの等方性の分散粒子であり、XRDから高い結晶性を有する水酸化アパタイトであった。 培養上皮モデルはnHAp/PET、PET、ジルコニアに緊密に接触していたが、特にnHAp/PETと上皮の界面では細胞の旺盛な分化(厚い角化層)が確認された。また、固定後にプレートを抜去した組織像では、界面にて組織が外力により外反し、抜去プレートのSEM像では培養上皮の付着が見られ、nHAp/PETと上皮モデルの接着が確認された。ジルコニアの抜去後組織像では、nHAp/PETと類似した組織像が得られたが、組織の引裂は観察されず、nHAp/PETと比べ弱い接着性を有することが示唆された。Tiプレート直下には多層化した薄い、培養上皮が形成されるのみであった。 上皮モデルにより、接着・封鎖性の評価をより簡便に、in vitro下で行うことが可能となり、軟組織親和性の高い材料の開発や処理条件の最適化のためのスクリーニング検査として有用であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CELLnTEC社より購入したHuman Epidermal Progenitor Keratinocyte (HPEK) cellsを使用したが、増殖効率が悪い。現在、原因不明である。推奨培地、推奨環境で培養しているため、現在メーカーに問い合わせ、原因探索中である。
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今後の研究の推進方策 |
同様にミリポア社のMillicell-PCF cell culture insert(insert)を使用し、3次元培養上皮モデルを構築する。 上皮モデル構築後、試料-上皮間界面付近の培養組織を観察するにあたり、凍結切片の作製し接着性タンパク質等の免疫組織化学的検索を行う。組織学的観察では、まずHE染色を施し、細胞及び培養組織構造の全体像を把握する。具体的には試料-上皮間界面付近の培養組織の多層化の有無、またどの層(例:有棘層など)にて主に接着・接触しているか、また過角化や細胞異型、異型核分裂の探索等を行う。接着性を評価するためにヘミデスモゾームの構成要素であるインテグリンβ4とラミニン5を免疫組織化学的に探索し、ランゲルハンス細胞の抗原提示能(活性度)を評価するためCD80及び86を同様に探索する。 上皮モデル-材料界面の培養組織をTEM観察することにより、ヘミデスモゾーム発現の探索、およびSEM観察により天然歯歯肉上皮の付着上皮に見られるDAT(Directly Attacheed to the Tooth)細胞(エナメル質との接着に深く関与)に似た形態をもつ細胞が存在の有無を確認する。 炎症性評価のため、上皮細胞とランゲルハンス細胞が産生するインターロイキン1β、4及びTNF-αを培地及び培養組織から抽出しELISA法にて定量分析を行う。感作性評価は抗原刺激を受けると上皮細胞から産生されるGM-CSFおよびTNF-αとこのサイトカインより活性化されたランゲルハンス細胞が産生するIL-12(P35)、IL-12(p40)を定量評価することにより、感作性評価を行う
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