研究課題
ナイミーヘン症候群の蛋白NBS1 はC末側100アミノ酸領域で、修復蛋白MRE11以外にも、ATM、RNF20、RAD18などと結合してチェックポイント、クロマチン・リモデリング、損傷乗り越えDNA合成、アポトーシスのDNA修復調整経路を制御する。本研究はNBS1のこれら結合ドメインの役割の解析を目的とする。マウスを用いた研究利点の一つは、交配により目的としたレポーター遺伝子の導入が可能なことである。NBS1ノックインマウスのDNA修復能を定量的に測定するために、非相同末端再結合のレポーター遺伝子pEJをROSA26座位に導入した遺伝子改変マウスを作製した。このマウスは正常に発育して、またES細胞への制限酵素I-SceIの導入により蛍光物質GFPの発現も顕著に増加した。一方、マウスとヒトではDNA修復経路が必ずしも一致しないことが指摘されるので、CHRSPR法を用いてヒトU2OS細胞のNBS1遺伝子のRAD18結合ドメインを欠失した変異細胞を作製した。驚いたことに、ヒトNBS1ノックイン細胞はマウスのRAD18結合ドメインノックイン細胞と異なり、RAD18フォーカス形成が観察された。正常な細胞分裂には中心体が正確に2個に複製される必要があるが、放射線照射により3個以上の中心体が生じることを我々は報告した。この実験は培養細胞を用いたものであるが、母マウスに1Gy,2Gy照射した結果、マウス胎児には中心体過剰複製が原因のMultipolar分裂が高頻度に観察された。この異常は最終的に細胞死につながるので、胎児の放射線高感受性ならびにNBS1遺伝子の関与について解析を進めている。また、NBS1ノックインマウスのゲノム不安定性による放射線発がんを検証する目的で、NBS1ノックインマウスのホモ、ヘテロ、野性型の3グループの発がん実験に充分量のマウス確保のための産生を行っている。
2: おおむね順調に進展している
ノックインマウスの解析および中心体異常と放射線発がん実験の準備も順調に進んでいる。また、平成26年度には8報の原著論文ならびに5回の招待講演(そのうち国際学会は2回)と本研究は関連研究者に興味を持って受け入れられている。
マウスとヒト遺伝子では性質が異なることが指摘されたので、ノックインマウス由来細胞に加えて、最近注目されているCHRIPR法を用いてヒト細胞のノックインとの比較研究も実験テーマに加えた。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 5件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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