亜熱帯島嶼生態系における水陸境界域の生物多様性保全の研究

2014 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 26241027
• 研究機関: 鹿児島大学
• 研究代表者: 鈴木 英治 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (10128431)
• 研究分担者: 桑原 季雄 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (00225319) ; 久米 元 鹿児島大学, 水産学部, 助教 (00554263) ; 鈴木 廣志 鹿児島大学, 水産学部, 教授 (30162994) ; 冨山 清升 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (30272107) ; 宮本 旬子 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (40244222) ; 井村 隆介 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (40284864) ; 平 瑞樹 鹿児島大学, 農学部, 助教 (40284913) ; 川西 基博 鹿児島大学, 教育学部, 准教授 (50551082) ; 河合 渓 鹿児島大学, 学内共同利用施設等, 教授 (60332897) ; 寺田 竜太 鹿児島大学, 水産学部, 准教授 (70336329) ; 山本 智子 鹿児島大学, 水産学部, 准教授 (80305169) ; 本村 浩之 鹿児島大学, 学内共同利用施設等, 教授 (90433086)
• 研究期間 (年度): 2014-04-01 – 2018-03-31
• キーワード: 生物多様性 / 奄美大島 / 薩南諸島

研究実績の概要

奄美大島の住用川、役勝川、大和川の43調査区で植物社会学的植生調査を行い、群落を区分した。2011年よりも砂礫堆，河床岩上では多様度が低下した区が多かったが、土石流堆や谷壁斜面ではほとんど変化しなかった。河川上流，中流，河口付近に生育する植物を収集し、ホウザンツヅラフジ等の遺伝子解析を行い学会で発表した。動物では、陸水産十脚甲殻類を50地点で調査し、奄美大島全域の河川での分布状況を明らかにした。陸産貝類については、薩南諸島に分布する集団間でDNA解析を行い、分化課程を考察した。河川の魚類では1990年から続いているリュウキュウアユの個体数変動調査を続け、成長履歴の解析、餌生物の解明、その他の魚類の種組成変動を調べた。
海岸植生は、環境省が公開している2.5万分の1の植生図を解析し、島全体で各植生が占める長さを求め、傾斜との関係を求めた。詳細な植生図作成のために奄美群島全域の航空写真を購入した。マングローブ、アダン群落などで調査区を設定した。海藻･海草類は、奄美大島北部の延べ33ヵ所で調査し、海草10種，海藻約170種を見出した。温帯・熱帯性種の分布推移帯にあり、熱帯性海草の分布の北限になっていることを明らかにした。
海の動物では、底生生物の調査を奄美大島の4海岸で重点的に行い、それぞれの地点で216～313個体を得て、29～68種が分布を確認した。2009年から継続している住用干潟の貝類の個体数調査を実施したが年変動が大きく、それには年降水量が関係している可能性があった。魚類相調査は徳之島で行い33科112種194個体 の標本を得たが、数種で分布の南限、北限を変えた。
人間社会の生物多様性への影響を明らかにするために、住用町と西仲間集落で環境保全に関する意識と民族知に関する聞き取り調査を行った。2月19日に研究成果のまとめと公開のために鹿児島大学で公開講演会行った。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

全体としては、現地調査はおよそ計画通りに進行しており。すでに学会発表も18件、査読付き論文も11編発表された。
ただ、陸と海の相互作用の研究も目的の一つであるが、海の生物が豊富で調査に適した地域の陸側がほとんど人工的に改変された場所が多いために、陸上植物の調査に適した場所が少なく、適地の探索に時間がかかり今年度はあまり進まなかった。

今後の研究の推進方策

今年度の調査が全体としては順調に進んでいるので、今後も継続して未調査地域の研究などを進めていく。
陸と海の相互作用については、干潟と沖合、河口域と干潟、河川と河畔植生など、隣接する生態系に生息する生物、両者を移動する生物に焦点を絞り、その相互作用を調査する。

研究成果

• [雑誌論文] テナガエビ科スジエビの奄美大島における初記録 (2015)
  • 著者名/発表者名: 鈴木廣志・大元一樹・光木愛理
  • 雑誌名: Nature of Kagoshima 巻: 41 ページ: 101-103
  • オープンアクセス
• [雑誌論文] Drum Travel: Ensemble Drumming Traditions on Kikaijima---Cultures, Histories, Islands, (2015)
  • 著者名/発表者名: Henry J, Kuwahara S.
  • 雑誌名: Asian Music 巻: 46 ページ: 110-145
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Multiplex PCR-based genotyping of mitochondrial DNA from two species of the genus Batillaria (B. multiformis and B. flectosiphonata) from Amami-Oshima Island, Japan. (2014)
  • 著者名/発表者名: Hirose K,Yyrisue T, Itoh H, Yamamoto T, Kojima S
  • 雑誌名: Plankton & Benthos Research 巻: 9 ページ: 67-70
  • 査読あり
• [雑誌論文] トカラ列島の陸産貝類の生物地理学的研究 (2014)
  • 著者名/発表者名: 市川志野・中島貴幸・片野田裕亮・冨山清升
  • 雑誌名: 日本生物地理学会会報 巻: 69 ページ: 23-36
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] The land snail fauna in Tokara Islands, Japan. (2014)
  • 著者名/発表者名: Tomiyama T, Ichikawa S, Nakashima T, Katanoda Y, Ohkubo K and Sakai R.
  • 雑誌名: The Tentacles 巻: 23 ページ: 21-23
  • 査読あり
• [雑誌論文] Size-assortative mating in the dioecious tidal snail Clithon (Pictoneritina) oualaniensis (Lesson,1831) (Gastropoda; Neritidae) (2014)
  • 著者名/発表者名: Tomiyama K, Kitasako H, Onoda G, Kikuchi Y
  • 雑誌名: Biogeography 巻: 16 ページ: 55-57
  • 査読あり
• [雑誌論文] Takarajima: A Treasured Island Exogeneity, Folkloric Identity and Local Branding (2014)
  • 著者名/発表者名: Philip H, Kuwahara S.
  • 雑誌名: Journal of Marine and Island Cultures 巻: 3 ページ: 20-30
  • DOI: doi:10.1016/j.imic.2014.03.001
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] The validity of Helcogramma ishigakiensis (Aoyagi, 1954) and a synopsis of species of Helcogramma from the Ryukyu Islands, southern Japan (Perciformes: Tripterygiidae). (2014)
  • 著者名/発表者名: Tashiro, S. and H. Motomura.
  • 雑誌名: Species Diversity 巻: 19 ページ: 97-110
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Sebastapistes perplexa, a new species of scorpionfish (Teleostei: Scorpaenidae) from Japan. (2014)
  • 著者名/発表者名: Motomura, H., M. Aizawa and H. Endo.
  • 雑誌名: Species Diversity 巻: 19 ページ: 133-139.
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Pterois paucispinula, a new species of lionfish (Scorpaenidae: Pteroinae) from the western Pacific Ocean. (2014)
  • 著者名/発表者名: Matsunuma, M. and H. Motomura.
  • 雑誌名: Ichthyological Research, 巻: 61 ページ: 1-20
  • DOI: DOI 10.1007/s10228-014-0451-6
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] A new species of anchovy, Encrasicholina macrocephala (Clupeiformes: Engraulidae), from the northwestern Indian Ocean. (2014)
  • 著者名/発表者名: Hata, H. and H. Motomura.
  • 雑誌名: Zootaxa 巻: 394 ページ: 117-124.
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Phylogeography of Blacktip Grouper, Epinephelus fasciatus (Perciformes: Serranidae), and influence of the Kuroshio Current on cryptic lineages and genetic population structure. (2014)
  • 著者名/発表者名: Kuriiwa, K., S. N. Chiba, H. Motomura and K. Matsuura.
  • 雑誌名: Ichthyological Research 巻: 61 ページ: 361-374
  • DOI: DOI 10.1007/s10228-014-0408-9
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
• [学会発表] 琉球列島の沿岸生態系を支える海藻・海草類． (2015)
  • 著者名/発表者名: 寺田竜太
  • 学会等名: 第62回日本生態学会大会
  • 発表場所: 鹿児島大学(鹿児島県、鹿児島市）
  • 年月日: 2015-03-22 – 2015-03-22
  • 招待講演
• [学会発表] 南西諸島における魚類多様性―新しい生物地理区境界線の発見． (2015)
  • 著者名/発表者名: 本村浩之
  • 学会等名: 第62回日本生態学会大会
  • 発表場所: 鹿児島大学(鹿児島県、鹿児島市）
  • 年月日: 2015-03-22 – 2015-03-22
  • 招待講演
• [学会発表] 与論島産シマチスジノリの驚くべき生育環境と光合成に対する光，温度の影響 (2015)
  • 著者名/発表者名: 寺田竜太，渡邉裕基，藤本みどり，畳谷伊織，國分翔伍，Gregory N. Nishihara．
  • 学会等名: 日本藻類学会第39回大会
  • 発表場所: 九州大学（福岡県、福岡市）
  • 年月日: 2015-03-20 – 2015-03-20
• [学会発表] 北限マングローブ林における食物網構造 (2015)
  • 著者名/発表者名: 白澤大樹・木下涼・山本智子・山中寿郎
  • 学会等名: 日本生態学会第62回大会
  • 発表場所: 鹿児島大学(鹿児島県、鹿児島市）
  • 年月日: 2015-03-19 – 2015-03-22
• [学会発表] 異なる人為圧下の奄美大島照葉樹林植生 (2015)
  • 著者名/発表者名: 石貫泰三･鈴木英治
  • 学会等名: 日本生態学会第62回大会
  • 発表場所: 鹿児島大学(鹿児島県、鹿児島市）
  • 年月日: 2015-03-18 – 2015-03-22
• [学会発表] 奄美大島の干潟における底生生物の空間分布 (2015)
  • 著者名/発表者名: 緒方沙帆・上野綾子・佐藤正典・山本智子
  • 学会等名: 日本生態学会第62回大会
  • 発表場所: 鹿児島大学(鹿児島県、鹿児島市）
  • 年月日: 2015-03-18 – 2015-03-22
• [学会発表] 奄美大島の干潟底生生物相；底質の異なる干潟間での比較 (2015)
  • 著者名/発表者名: 上野綾子・緒方沙帆・佐藤正典・山本智子
  • 学会等名: 日本生態学会第62回大会
  • 発表場所: 鹿児島大学(鹿児島県、鹿児島市）
  • 年月日: 2015-03-18 – 2015-03-22
• [学会発表] 黒潮と南日本の魚たち 黒潮はベルトコンベヤーか障壁か？ (2014)
  • 著者名/発表者名: 本村浩之
  • 学会等名: 琉球列島の魚類多様性．公開シンポジウム
  • 発表場所: 高知大学（高知県、高知市）
  • 年月日: 2014-11-29 – 2014-11-29
  • 招待講演
• [学会発表] 色彩保存標本 赤・黄系色彩保存研究． (2014)
  • 著者名/発表者名: 岩坪洸樹・本村浩之
  • 学会等名: 第47回日本魚類学会年会
  • 発表場所: 県立生命の星・地球博物館（神奈川県、小田原市）
  • 年月日: 2014-11-15 – 2014-11-16
• [学会発表] 西インド洋から得られたフサカサゴ科エボシカサゴ属の1未記載種 (2014)
  • 著者名/発表者名: 松沼瑞樹・本村浩之
  • 学会等名: 第47回日本魚類学会年会
  • 発表場所: 県立生命の星・地球博物館（神奈川県、小田原市）
  • 年月日: 2014-11-15 – 2014-11-16
• [学会発表] 南九州と琉球列島における標本に基づくイットウダイ科アカマツカサ属魚類相 (2014)
  • 著者名/発表者名: 江口慶輔・本村浩之
  • 学会等名: 第47回日本魚類学会年会
  • 発表場所: 神奈川県立生命の星・地球博物館，小田原市．
  • 年月日: 2014-11-15 – 2014-11-16
• [学会発表] カタクチイワシ科タイワンアイノコイワシ属の分類学的再検討 (2014)
  • 著者名/発表者名: 畑 晴陵・本村浩之
  • 学会等名: 第47回日本魚類学会年会
  • 発表場所: 県立生命の星・地球博物館（神奈川県、小田原市）
  • 年月日: 2014-11-15 – 2014-11-16
• [学会発表] テンジクダイ科Rhabdamia属とVerulux属の分類学的再検討 (2014)
  • 著者名/発表者名: 吉田朋弘・本村浩之
  • 学会等名: 第47回日本魚類学会年会
  • 発表場所: 県立生命の星・地球博物館（神奈川県、小田原市）
  • 年月日: 2014-11-15 – 2014-11-16
• [学会発表] Benthic animal community of mud flats in Amami-Oshima Island (2014)
  • 著者名/発表者名: Ryoko Ueno，Shiho Ogata，Tomoko Ymamoto
  • 学会等名: The 2nd Asian Marine Biology Symposium
  • 発表場所: Jeju, Korea
  • 年月日: 2014-10-02 – 2014-10-02
• [学会発表] 徳之島産ホウザンツヅラフジの遺伝的特性 (2014)
  • 著者名/発表者名: 宮本旬子，齋藤 加那子，上大川 千夏，行山武久
  • 学会等名: 日本植物学会第78回大会
  • 発表場所: 明治大学（神奈川県、川崎市）
  • 年月日: 2014-09-12 – 2014-09-12
• [学会発表] 奄美大島と九州南部における干潟底生生物相の比較；多毛類を中心に (2014)
  • 著者名/発表者名: 上野綾子・緒方沙帆・山本智子
  • 学会等名: 日本プランクトン学会・日本ベントス学会合同大会
  • 発表場所: 広島大学（広島県、東広島市）
  • 年月日: 2014-09-06 – 2014-09-06
• [学会発表] 奄美大島屋入干潟における底生生物相の変化 (2014)
  • 著者名/発表者名: 緒方沙帆・上田浩平・上野綾子・山本智子・佐藤正典
  • 学会等名: 日本プランクトン学会・日本ベントス学会合同大会
  • 発表場所: 広島大学（広島県、東広島市）
  • 年月日: 2014-09-04 – 2014-09-04
• [学会発表] 奄美の観光におけるエコツーリズムの位置づけ (2014)
  • 著者名/発表者名: 宋多情・桑原季雄
  • 学会等名: 2014年次日本島嶼学会五島大会
  • 発表場所: 総合福祉保健センター（長崎県、五島市）
  • 年月日: 2014-09-04 – 2014-09-04