研究課題/領域番号 |
26242010
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 誠 北海道大学, 高等教育推進機構, 教授 (60322856)
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研究分担者 |
大塚 雄作 独立行政法人大学入試センター, -, 教授 (00160549)
人見 久城 宇都宮大学, 教育学部, 教授 (10218729)
細川 和仁 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (30335335)
大貫 麻美 白百合女子大学, 人間総合学部, 准教授 (40531166)
隅田 学 愛媛大学, 教育学部, 教授 (50315347)
荻原 彰 三重大学, 教育学部, 教授 (70378280)
三好 美織 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (80423482)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | コンピテンス / 資質 / 能力 / カリキュラム / 評価 / コンピテンシー / 学力 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、まずフィンランドを中心とするコンピテンス基盤型教育の先進国の知見や、国内での技術者が具備したコンピテンス、また日本独自の文化に潜むコンピテンスについて情報を集積することから開始した。特に6月12日から23日までの間を「コンピテンス科研週間」と題し、①北大サイエンスカフェでの独創性・創造性に関するセッション、②北大の大学院授業である「科学技術と社会システム特論2」での独立時計師とのセッション、③ヘルシンキの理科ベストティチャーであるキルシ・アリノ氏を招いてのコンピテンス基盤型教育の実践授業、④研究代表者である鈴木の系統解剖実習公開授業にみるコンピテンスの育成の4つの研究会を連続的に実施し、27年度までにまとめてきたコンピテンスの構成要素の検討と、ものを生み出す最先端で求められている資質や能力や新しいナショナルコアカリキュラムでのコンピテンス育成について多くの知見を得た。 また、27年度から開始した物理領域、化学領域、生物領域、地学領域にそれぞれ配置した「学習コンテンツ再構成ワーキンググループ」の活動を活発化させ、それぞれ数回のWGを持ちながら、コンピテンスに基づいた学習コンテンツの再構成に関する研究を進めた。 研究成果は、各WGごと公開することとし、生物WGを中心に、日本理科教育学会や日本生物教育学会で広く知見を公開し情報交換を進めた。 また、コンピテンス基盤型教育を急速に進めるフランスの国民教育省の調査を、日本大使館の協力の下調査を行い、貴重な情報を得ることができた。こちらは現在翻訳中である。一方フィンランドでも新ナショナルコアカリキュラムでの授業参観を複数実施し、コンピテンスの醸成のためにどのような指導や評価を進めているのか、新たな知見を得ることができた。また、生命観で用いられることが多い解剖教材の調査をアメリカで行い、指導方法に関する知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在研究の中心は「研究実績の概要」に記したとおり、2年間で策定した理科教育に求められるコンピテンスを元にしながら、物理・化学・生物・地学各領域で学習コンテンツ再配置、ならびに新規学習内容の検討に入ったところである。WGによって進捗状況について差はあるが、おおむね順調に学習コンテンツ再配置の作業は進んでいる。例えば生物WGは、生命観の育成を柱に生命科学教育の再構成を目指して、幼児教育から高校教育までに育成すべきコンピテンスについて検討を進めており、成果も出つつあるところである。学会発表も積極的に進めており、文科省側の意向も汲みながら次期学習指導要領に参考となる知見が提供できるよう進めている。地学WGも地学領域の研究者へのコンピテンス調査を行いながら、WGで研究会を精力的に進め、従来の学習コンテンツの整理に入っている。物理及び化学WGは、学習コンテンツの整理に入る前に基礎的な求められるコンピテンスの整理を終えたところである。特に化学WGはフランスやシンガポールで進むコンピテンス基盤型教育の分析を進めている。 コンピテンスの構成要素に関する研究は、フィンランドから教員を招聘する、あるいはフルタイムによる現地での授業参観といった現場調査から、具体的なその育成方法や求める資質や能力についての考え方や、最新の知見を得てきている。これはフランスも同様に進めることができている。一方教育は自国の「文化」が基盤となるが、日本型のコンピテンスを考える時、日本独自の伝統や文化に潜むコンピテンスの分析が必要となる。この分析がやや遅れている。次年度以降は、特に江戸期などに絞って日本絵画に観られる作者の資質や能力の分析を試みる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
本科研も残すところ後2年と迫ってきた。今年度は、できあがったてきた物理・化学・生物・地学各領域に求められるコンピテンスを一度スクラップ・アンド・ビルドし、フィンランドの7つのコンピテンスやフランスの共通基盤の5つのドメインのような、Domain of competence(教科横断的なコンピテンスを含む)を検討するには最も良い時期と考える。それが可能になれば、今まで幼児教育から高校教育まで主に縦方向に整理してきた各領域のコンピテンスと融合しながら、より大胆な学習コンテンツの再配置ができる可能性があると考えている。すでに2017年4月16日に第一回目のDomain of competenceの検討を半日かけて実施したが、大きな成果を得ることができている。この作業を繰り返しながら、児童や生徒が具備すべきコンピテンスを整理する予定である。また、教科の垣根を越えた議論も必要であり、化学WGは生物WGと合同で作業を進め、学習コンテンツの融合を大胆に進めていく予定である。 「現在までの進捗状況」にも記したが、日本型のコンピテンスを考える時、日本独自の伝統や文化に潜むコンピテンスの分析が必要となる。この分析も推進して行きたいと考えている。研究をより推進するには、学会発表で知見を披瀝し情報交換や批判をいただくことである。その意味でも残り2年間は、学会の「課題研究」にエントリーし、しっかりした議論を積み重ねるつもりである。
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