研究課題
本研究計画は児童期コホートと成人期コホートの二つの双生児コホートからなる。児童コホートでは、現在小学校5年に在籍する双生児をターゲットとして、来校形式による個別調査と郵送形式による質問紙調査を実施した。個別調査では、実行機能(DCCSなど)、認知能力と学業達成を測定する個別課題(K-ABCからの抜粋)、ならびに双生児きょうだい間の社会的協力関係を測定する観察課題からなり、約50組の協力を得た。質問紙調査は、学業やメンタルヘルス、生活時間や家庭環境などに関する質問項目を、同じ小学校5年生の双生児とその保護者を対象として施行、約250家庭からの回答を得た。これらの解析は、次年度以降、データの集積を待って行う。成人期コホートでは認知能力の不一致一卵性双生児を対象として、脳機能・脳構造と遺伝子発現(エピジェネティクス)の関連を明らかにするためのデータを取り始めた。玉川大学脳科学研究所のfMRIを用い、VBM計測のための構造画像、ならびに課題負荷のないresting stateの自発的脳活動を撮像するというパラダイムで、5組10人のデータを収集した。またあわせて分子遺伝学的解析のために採血を行った。まだデータ収集の途中段階ではあるが、ここまでのデータをまとめたものを国際学会(Human Brain Maapping)の年次大会にsubmitした。また本年度は本研究の目的をさらに有効に達成するために、希少性の高い双生児縦断データを他機関のもつ双生児データと結合し、二次利用ができるようにするために、そのデータ管理のあり方について慶應義塾大学文学部倫理委員会に申請を行ったところ、匿名化と同意の取り方に関して問題点が指摘され、その修正を行なった。
2: おおむね順調に進展している
児童期コホートにおいて、質問紙調査の回収率は予想通りであったが、来校調査では予想を上回る参加率であった。成人期コホートでは、質問紙調査が年度内に実施できなかったが、fMRIの脳画像データと分子遺伝学的データの収集が順調に開始された。これらのことから、全体としては順調に進展しているといえる。
本年度は、成人期の質問紙調査を実施すること、これまでに収集されたデータの予備的な解析、ならびにそれらをこれまでに蓄積してきたデータとむすびつけて縦断解析を行い、児童期に関しては学業やメンタルヘルス、成人期に関しては社会的達成とライフイベントの変化に及ぼす遺伝と環境の連続性と変化の見通しを立ててゆく予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
Frontiers in Psychology
巻: 6 ページ: ー
10.3389/fpsyg.2015.00373
10.3389/fpsyg.2015.01712
生活科学研究
巻: 37 ページ: 173-177