研究課題
児童コホートと成人コホート、それぞれについて、以下の調査を実施した。児童コホートでは昨年度に引き続き、現在小学5年生(11歳)の双生児を対象に、約100組の質問紙調査と来校形式による約30組の同性の個別発達調査を実施した。質問紙は親とふたごきょうだいそれぞれを対象に、学業成績、学習態度や能力観、家庭・学校での学習・文化環境、パーソナリティ、問題行動などをたずねている。また個別発達調査は認知能力と学習能力を測定するK-ABC、ならびにPC上で施行する実行機能課題である。これらは毎週末に個別に3人の調査員によって一組当たり3時間かけて実施された。この予備分析では、いずれの尺度も理論的に予想される因子構造をなし、特に実行機能の双生児分析では一卵性双生児が二卵性双生児よりも類似性が高いという、妥当な結果が得られ、測定が適切になされていることが示された。成人コホートでは、質問紙を作成し配布した。この質問紙は、心的健康度、生活戦略、社会性、家庭環境、職業経験など、社会的達成と社会適応に関する指標が中心としたものである。回収数は約500人であった。また認知能力における不一致一卵性双生児のMRI調査を実施し、resting stateにおける前頭頭頂間のconectivityの差異とエピゲノムとの間に有意な関連がみられた。また教育動機と利他性と遺伝と環境の関連性も分析され、利他的動機には珍しく遺伝的影響が小さいことを示唆された。いずれのコホートについても、研究成果の報告をニュースレターによって参加者に通知した。
2: おおむね順調に進展している
予定していた質問紙調査も児童コートに続いて成人コホートも完成し、データの回収まで進んだ。MRIと遺伝子のデータを提供してもらうための認知能力の不一致一卵性双生児の参加率が期待したほどではないため、IQ総計だけでなく言語性IQ、空間性IQといった下位得点において不一致であるという基準にすること、また認知能力に加えて精神的健康度についての不一致一卵性もターゲットに充てることにして、参加者数を増やすようにしている。
本年度は最終年度に当たるため、やや不足気味なMRIと遺伝子データの収集を積極的に行い、データを集約して分析を行い、学会発表ならびに論文作成など、成果の創出をメインに据える。そのために未入力のデータの入力を年度前半に集中させるとともに、行動データ、脳画像データ、遺伝子による分子生物学的データを相互に結びつけて、遺伝子から脳活動を経て、行動にむすびつく行動ゲノミクス的知見をえる。
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Social learning and innovation in contemporary hunter-gatherers: Evolutionary and ethnographic perspectives
巻: 1 ページ: 293-309
Infant and Child Development
巻: Jul 5 ページ: -
Archives of Sexual Behavior
巻: 45(7) ページ: 1681-1695