研究課題
本研究では、湾岸アラブ諸国(アラブ首長国連邦、オマーン、カタル、クウェート、サウジアラビア、バハレーン)が多数の移民労働者を受け入れることによって構築する政治、経済、社会体制についての分析を行った。同諸国は多くの地域と国から移民労働者を受け入れているが、国民と移民、異なる国籍の移民とのあいだに社会的関係はほとんど構築されない。このように異なる国籍の人びとが労働市場では関係をもちつつも、社会的な関係が形成されない状況を「新・複合社会」と概念化し、理解することを試みた。方法としては、同諸国の政治経済体制の分析と、主にフィリピンとインドからの移民労働者に焦点をあてた実証的研究を行った。その結果、国民を頂点とした国籍別の分割労働市場の形成と、移民労働者を一時的労働者としてのみ受け入れる政策が、社会関係の形成を阻害する要因であることが分かった。一方、このような政治、経済、社会体制は、移民にとって同化圧力を受けないというメリットがある一方、底辺移民労働者(建設労働者、家事労働者など)にとっては、人権侵害が多発しやすい構造を生み出していることが明らかになった。本研究の成果は、編著書Migrants in the Middle East and Asia: Responses to Inclusion and Exclusion(仮)をシンガポールに拠点を置くSpringer社から出版する予定である。また、『湾岸アラブ諸国の移民労働者』(明石書店、2014年)の和訳を大幅に改訂し、オランダに拠点をおくBrill社から出版する予定である。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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文教大学国際学部紀要
巻: 28 (2) ページ: 157-170
Asia Pacific Journal of Social Work and Development
巻: 27 ページ: 211-223
https://doi.org/10.1080/02185385.2017.1408489