研究実績の概要 |
共同研究先のSchindler研究室で、新規ファンコニ貧血(FA)原因遺伝子が同定された(計画書では仮にFANCXとしていたが、RFWD3/FANCWである)。トリDT40およびヒトHAP1で作製したRFWD3ノックアウト細胞を用いた解析から、RFWD3はDNAクロスリンク(ICL)修復、なかでも相同組換え(HR)経路の欠損が示された。特に欠損細胞では、ICL薬剤処理によるHRの中心分子RPA, RAD51の核内フォーカス形成が持続していた。RFWD3とRPA、RAD51の相互作用を見いだし、細胞内での両者の会合を検出した(平成26, 27年度)。 RFWD3はユビキチンE3リガーゼ活性を示すRINGドメインをもち、RPA、RAD51ともユビキチン化修飾を受けるとの報告があるため、RFWD3が両者をユビキチン化する可能性を検討した。タグ付きのユビキチンの発現細胞を用い、細胞内でのRPA、RAD51のユビキチン化を確認した。E3ドメインの機能欠損変異体(C305A)では、ユビキチン化が著減していた。このユビキチン化反応にはRFWD3のリン酸化、VCP/p97による制御が寄与する。 加えて、精製タンパク質を用いたRFWD3による試験管内ユビキチン化反応により、RPA, RAD51のユビキチン化を検出した(早稲田大学胡桃坂研究室との共同研究)。ユビキチン化RPA, RAD51はDNAから解離しやすいことなどが明らかとなった。 RFWD3欠損細胞では、ICL修復のHR後期因子の活性化が阻害されていた。具体的にはRAD54, MCM8のフォーカス形成、クロマチン局在の減少が見られた。 以上のことから、RFWD3の機能は、RPA, RAD51のユビキチン化を介して適切なタイミングで修復の場から除去し、HR反応を進行させるというモデルが導かれる。これらの成果は、論文として投稿した。
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