研究課題
個体糖代謝調節と血中アミノ酸の「質」との関連が明らかにされ、生活習慣病予防を目指した食生活改善の標的として、アミノ酸・ペプチドの重要性が指摘されている。その中で、ヒスチジン・トリプトファン(摂食抑制系アミノ酸)は、それぞれ中枢神経ヒスタミン・セロトニン作用を介して耐糖能改善作用を有する可能性が示されている。代表者は、ヒスチジンによる耐糖能改善効果が、中枢神経ヒスタミン作用を介した肝糖産生抑制により引き起こされることを明らかにしてきた。本研究課題では、ヒスチジン・トリプトファンによる中枢性肝糖産生抑制作用の、生活習慣病、特に糖尿病の発症予防における有用性の解明を行う。ヒスチジン・トリプトファンによる中枢神経性肝糖産生抑制のメカニズムを解明し、長期間投与法の効果について検討を行う。このような摂食抑制系アミノ酸の機能性解明は、アミノ酸の「質」に基づいた糖尿病・生活習慣病予防の新たなアプローチの開発に繋がるという重要性を有している。本年度には、中枢神経性の肝糖産生抑制メカニズムの解明を行った。そのなかで、脳室内にヒスチジンを投与することによって、インスリン投与時と同様に、迷走神経活動が変化することを見出している。また、脳室内インスリンまたはヒスチジン投与による肝糖産生抑制作用が、クッパー細胞除去により消失することも明らかにしている。これらの結果が、中枢神経が、インスリンなどの液性因子のみならず、栄養素を感知することによっても、迷走神経・クッパー細胞系を介して、肝臓糖代謝を制御することを示唆している。迷走神経の阻害剤を用いた検討から、迷走神経・クッパー細胞を介した、中枢神経と肝臓クロストークにアセチルコリンの関与を見出している。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究計画では、中枢神経ヒスチジン作用の検討から、中枢神経・肝臓クロストークによる糖代謝調節のメカニズムの解明を行っており、論文に報告を行っている。また、実際に、クロストークの実体が、アセチルコリンを介した迷走神経・クッパー細胞連関であることを見出している。トリプトファン・セロトニン系の中枢神経作用の肝糖代謝調節における役割についても、検討をすすめており、おおむね研究計画は予定通り順調に進展している。
平成27年度には、中枢神経・肝臓クロストークのメカニズムにおけるアセチルコリンの作用機序を解明するとともに、中枢神経トリプトファン・セロトニン系の糖代謝調節における重要性の検討も進めていく。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
Hepatology
巻: 61 ページ: 1343-56
10.1002/hep.27619.
Diabetol Int.
巻: 5 ページ: 158-164
10.1007/s13340-014-0185-8.
Diabetes
巻: 64 ページ: 459-470
DOI; 10.2337/db14-0695.
Antioxid Redox Signal.
巻: 21 ページ: 2515-2530
10.1089/ars.2013.5391.
Nat Commun.
巻: 5 ページ: 4982
10.1038/ncomms5982.
J Clin Pathol.
巻: 67 ページ: 396-402
10.1136/jclinpath-2013-201815.
http://inoue.w3.kanazawa-u.ac.jp/achievement.html