研究課題/領域番号 |
26284072
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
村岡 貴子 大阪大学, 国際教育交流センター, 教授 (30243744)
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研究分担者 |
石黒 圭 国立国語研究所, 日本語教育研究・情報センター, 准教授 (40313449)
鎌田 美千子 宇都宮大学, 留学生センター, 准教授 (40372346)
磯野 英治 大阪大学, 国際教育交流センター, 准教授 (50720083)
因 京子 日本赤十字九州国際看護大学, 看護学部, 教授 (60217239)
中島 祥子 鹿児島大学, 教育学部, 准教授 (80223147)
堀 一成 大阪大学, 全学教育推進機構, 准教授 (80270346)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アカデミック・ライティング / 在学段階 / キャリア形成 / 論文スキーマ / ビジネス・ジャパニーズ / 日本語能力 |
研究実績の概要 |
本年度は、2回の全体会議において各人の所属先大学でのアカデミック・ライティング教育の現状についてアンケート調査を行って結果を共有した。分担者と連携研究者、代表者は、各教育現場での実践や研究の成果を共有し、次の通り種々の議論を行った。 1) 日本語だけでなく、高校までに学んだ英語でのAWについて、言語別に切り離して捉える学習者がいるが、言語の差異とは別に、ライティングとして通底する要点が存在することを意識化させる必要がある。 2) ルーブリックを用いた評価にも長所と短所がある。自己評価が高すぎるケースもあり、教員と学習者の評価の差異を詳しく探る必要がある。 3) 言語項目や文章構成だけをモデル文として提示して学習させるのではなく、学習者が自身の能力をより明確に把握できることも目指し、いずれは、学習過程、複数の学習段階のモデルを示したい。それにより、学習者が、自身がどの段階にあるかを見極めて、目指す方向を把握できると期待できる。 4) 社会人となった現職者に対する研修もニーズが高い。ライティングへのビリーフや学び方の多様な社会人も実務の現場で苦慮している場合もあり、そういった現状の改善に有用な知見を得たい。 加えて、小規模ながら、元留学生の日系企業に勤めるビジネスパーソン、および理系分野で企業との共同研究歴の長い元大学教員へのインタビュー調査も行い、社会への橋渡しについても調査を継続中である。さらに、代表者はタイの大学でのライティングに関する実験授業を行い、かつ、タイおよび中国の大学の研究者を招聘してライティング教育について情報交換を行った。以上の結果、社会人になってから必要とされるライティング能力は、学部や大学院で獲得するライティング能力と深く関連する部分が存在すると予測されるが、カリキュラム面でも、教員や学習者の意識の面でも、有用な接続をさらに進める必要性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代表者、分担者、連携研究者が所属先の教育現場の問題や課題、ライティング関連教材やライティング教育推進のための方策等、多様な情報を共有しつつ研究が勧められている。教材や論文等、公開した業績については、適宜、直接議論や質疑を行い、連絡を密にとっていることから、初年度として研究体制の基盤を構築できたものと考えられる。今後はより広範囲に、規模を拡大した調査研究を進め、成果を発表していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
学生が課されるレポート課題やそれへの対応、背景やビリーフについても、実態調査を試みる予定である。最終的には、社会への橋渡しも視野に入れた、大学が担う人材養成に適したアカデミック・ライティング教育について俯瞰的に見て、教育実践や啓発の方法について考察を深める。その際に、社会人の実務場面でのライティングの問題、現職者への研修等、学生以外の教育対象の想定も考えられる。日本語母語話者か否かの区別だけでなく、背景の別、目的別等、種々の観点から教育対象による学習過程において、通底するものとそうではないものの峻別を行うことも、今後の研究で目指していく。そこで、大学内の教育現場の在学段階別の学習者だけでなく、学習者を取り巻く環境の中の人的リソースとして、種々の分野の大学教員、学習者を支援する高学年学生や大学院生、修了生などの社会人といった内外のさまざまな背景の人材に対して、着実に調査を実施することを推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の分担者の旅費が、当初計画していたものと異なった。当初出張が予定されていたところが、本務の関係で出張が不可能、あるいは宿泊数を減らすこととなったため、残金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には、全体会議および個別の計画の打ち合わせと調査のため、本年度の残金を使用する予定である。
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