研究課題
危険運転を、より効果的に制御するための諸施策を、刑事法学のみならず、隣接諸科学(法社会学、法医学、法と心理学、法と経済学)の知見を動員して検討した。刑事法学的見地からは、危険運転に対する刑罰を更に引き上げるとともに、その摘発率、その訴追率を高めることが、一般予防機能を強化するために、適当な対応と考えられた。他方で、法医学、法と心理学の観点からは、飲酒運転に対する肉体的、心理的抵抗が減少している者との関係では、そうした厳罰化を指向する対策ではなく、適切な治療的措置を選択肢として用意することが必要だとの結論が導かれる。この発想は、環境(過程、職場、住居地域、ひいては文化的単位としての地方)の特性(飲酒に対する積極的、消極的な態度)に応じた法政策を検討するのが経済合理性に合致するとの発想になじみ、法社会学や、法と経済学の観点からも正当化されうる。そこで、刑事罰の適正な執行方法に資する施策(飲酒運転の検挙件数を高めるための方策等)と並び、そもそも飲酒運転に対する抵抗力が弱い者による飲酒運転を未然に防止するための施策(アルコール・イグニッション・インターロックの義務化。この義務づけを新たな刑事制裁として構成すること)や、飲酒運転の機会を減らすための社会政策(都市交通政策の再考)とも、より具体的に検討されるべきだとの結論に至った。これらの検討経過と結論は、地方の交通ボランティア等との共有も図られつつあり、今後とも、本研究で得られた発想を、社会的に施行することで、法概念としての刑罰につき、新たな視点を加えることができると予想される。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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