研究課題/領域番号 |
26285026
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
楜澤 能生 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (40139499)
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研究分担者 |
加藤 光一 松山大学, 経済学部, 教授 (60244836)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 有機農業 / 農地中間管理機構 / 集団的土地所有権 / 請負経営権 / 三権分置 |
研究実績の概要 |
1.茨城県石岡市八郷で展開されている有機農業の取り組みにつき、持続可能な農業と農地法制の視角から調査観察を行った。農協と生協が連携する産直の嚆矢となった事例であり、その後新規参入者の有機農業への受け入れが実践される。農地との関係では、地域慣行農家との良好な関係が形成されていることが注目される。耕作放棄地の利用を中心に条件不利地を比較的安価な賃料で借り入れ、補助金でこれをカバーしている。農協出資法人「やさと菜苑株式会社」を立ち上げ、新規就農を受け入れ独立させる取り組みが行われている。農地の約半分は中間管理機構からの賃借である。但し地元の慣行農家が有機へと転換しないことが最大の問題であり、農地管理の上でも今後の大きな課題である。 2.茨城県、宮城県、岩手県、熊本県の農地中間管理機構にてそれぞれ聞き取り調査を実施した。概ね人・農地プランに則した土地配分が一般的である。中間管理機構が農地集積に果たす実質的な役割はなお果たしきれていないという自己認識が持たれている。しかし管理機構へ農地を預けさせることが現在の課題であり、それが果たせれば次の段階として機構が集積のための流動化へ動くというシナリオが想定されている。最も先進的で先導的な取り組みとして知られる熊本の事例は、事業展開の対象である水稲作が、畜産・畑作・花卉経営等との複合経営の中で、補完的位置づけにあることに留意すべきである。今後は想定されている機構主導の農地移動と、地域における農地の自主管理との関係がどう展開するか、一つの論点となろう。 3.中国の広東外貿外語大学土地法制研究院の陳小君院長率いる研究チームと仏山市順徳区を中心とする経済発展の著しい地域で、請負経営権の流動性を中心に共同調査を実施した。 4.広東とは対照的な、山間地農業、条件不利地域での農地流動化を、中国山東省シ博市シ川区峨庄郷柏樹村において農家調査を通じて実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
農地適格法人以外の一般企業法人による農地賃貸借の調査が進捗していないことが、計画段階での想定から遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度が最終年であるので、まとめを行う。農地中間管理事業の展開と地域における農地の集団的自主管理との関係は、今のところ人・農地プランを前提として事業が展開されている状況が一般的と見てよいが、農機具会社等の農業経営進出や国家戦略特区での動向等、次第に農外企業による農業参入が本格化し、農地制度による規制が緩和されることにより、集団的自主管理にいかなる変容が生じ、農地の地域を越えた流動化がいかに進むかについての観察が重要となろう。他面で有機農業の実践現場において観察されるような農業への新規就農、あるいはIターンUターンによる家族経営の定着がどの程度進行するかについても観察が必要である。その場合に農村集落における居住・生活環境、非農業的都市的整備を、いかに展望するかというなお解決されていない法制的課題に取り組むことが、重要な研究課題となる。 また比較法研究では、中国における農地の流動化が、三権分置という法制上の対応によっていかに進行するかの解明が、大きな研究課題となる。私的土地所有と集団的土地所有という所有構造の基本的相違を超えて、地域の農民の手から農業経営が離れていこうとしている現実は日中共通の現象であるといっていい。両国の農地流動化と法制の関係を共同調査研究を通じて明らかにすることがもう一つの重要な課題となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数として、使用出来ない金額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
少額であるため、文房具などの物品を購入する際に使用する。
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