研究課題/領域番号 |
26285026
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
楜澤 能生 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (40139499)
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研究分担者 |
加藤 光一 松山大学, 経済学部, 教授 (60244836)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 請負経営権 / 三権分置 / 農地中間管理事業 / 農協による農地管理 |
研究実績の概要 |
中国における三権分置政策の実態につき、広東外語外貿大学土地制度研究院院長・陳小君教授ならびにその研究チームと合同で、広東省肇慶県湖区沙埔鎮沙三村、仏山市順徳区麦朗村、順徳区南水村にて、調査を実施した。請負経営権の実態と三権分置に関する農家の意識調査を主体とした。経済発展の遅れがみられる肇慶では請負経営権に関する権利意識、三権分置についての知識ともに低いのに対して、発展が著しい順徳区では、請負経営権の株式化という形態で集団経済組織が立ち上げられていた。前者においては農地分散と相まって経営権の流動化は進んでいない。他方後者においては、かつての郷鎮企業の進出に伴い農民の労働者化が進行し、耕作放棄や荒廃地が増大した。そこで集団が農地を管理する方向に転換した。集団経済組織が立ち上げられ、農民は請負経営権を株式として組織に出資し、配当を得る形態である。この組織が自ら経営をするのではなく、村内農家、村外大農家、農業企業の中から入札方式で経営者を決め経営権を賃貸。賃貸料は村の公共目的に使用する。三権分置による経営権の流動化は、この地ではすでに社会的に進行しているといってよい。区行政は村内農家への移転を政策的に誘導することはしていない。この形態での経営権の流動化であっても、個別農家の農業離れを防ぐことはできないであろう。 中国における三権分置政策につき法律学で議論されているのは主として経営権の法的性格(債権か物権か)に関する解釈論であり、経営権の流動化が地域農業に如何なる構造変動をもたらすかに関する関心が極めて低い。この点について本研究は一定の寄与ができると考える。 日本における農地管理の実態調査については、福島県において農協を主体とする農地管理の経緯と現状について調査研究を行った。中間管理事業の開始により、農協が農地移動に関与する機会が減少していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本の農地管理中間事業の影響に関する調査、中国における三権分置政策の下での農地流動化に関する実態調査、ともに進捗してきたが、それぞれなお調査件数を増やしていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後については、中国、日本の比較研究に加えて、ドイツにおける農地の流動化について比較の対象を拡大してい行く。ドイツではこの数年特に農外資本による農地取得が進んで農地価格が高騰し、現行農林地取引法が想定している農業構造、農地所有・利用関係に大きな変動が生じているからである。 労働生産物ではない土地の商品化が、市場経済のグローバル化の下で、従来のレベルを超えて進行することにより、地域で長年生産に従事し生活してきた人々と、自然を構成する土地との持続的関係性が切断され、自然の中に有機的に位置づけられた人々の生活空間(農村社会)が破壊されつつある現状を、日本、中国、ドイツの三国の動向を比較しつつ把握、分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年予定していた国際シンポジウムが実施できなかったため、今年度秋に実施するため。
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