農地を含む自然的社会的資源の維持管理が、生産活動と一体で行われると考えると、生産活動自体が持続可能でなければならず、持続可能な生産を担う主体が、資源の維持管理の主体として想定されなければならない。そのような主体としては生産活動が行われる地域(集落)の定住者が最もふさわしいという想定がまずは成り立つが、他方現状において生産の担い手は、効率化という経営上の要請から、個別農家から集落営農へ、さらに大型機械を備えて集落の範域を超えた広域で生産活動を展開する広域農業生産法人へと規模拡大する傾向にある。農地管理の範囲も広がり、生産主体と管理主体の一体性が保てなくなる可能性が生じる。そこで生産主体としての広域農業法人と、集落レベルで一般社団法人として設立する地域資源管理法人を区別しつつ、両者を関連付ける実践が提起されている。両主体の分離の方向性が望ましいか否かの実証が必要であろう。 他方中山間の条不利地域における農地管理に関しては、生産の広域化は難しく、集落単位での生産と資源管理が前提となろざるを得ない。ここでの集落機能の継続に大きな役割を果たしてきたのは中山間地域等直接支払制度である。この制度の変遷、制度的特長、課題を事例に即して明らかにし、地域共同体と国家の関係の在り方如何という視角から分析を行った。国家による直払いが地域の自律を可能にするために必要な制度的保障として機能してきたことが明らかになった。しかし人口減少の中で、外部の力をどう活用するかも重要な課題となる。この問題で参考となったのが、世帯加入率45%、54万世帯が組合員となっている京都生協の実践である。特に農村部における加入率が高く、生産者が同時に消費者(組合員)であり、他面消費者も生産に関与している。そこから農村の内部と外部といった二元論的発想を超えた、同じ生活圏で暮らす市民どうしの交流という新しい発想が生まれ始めている。
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