研究課題/領域番号 |
26285040
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
星野 俊也 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (70304045)
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研究分担者 |
山田 哲也 南山大学, 総合政策学部, 教授 (00367640)
上野 友也 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (10587421)
ポポフスキー ベセリン 国際連合大学サステイナビリティ高等研究所, その他部局等, 学術審議官 (80647941)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国連 / 人間の安全保障 / 平和 / 人権 / 開発 |
研究実績の概要 |
国連が2015年に創設70周年を迎えるなか、本研究は、主権国家が加盟国となり、多数国(政府)間の集団的・政治的な意思決定機関である国連の活動のなかで、一人ひとりの人間の生存・生計・尊厳がいかなる形でどれほど保護・伸張されてきたのかという視点から再検討するとともに、「国際の平和と安全」と「人間の平和と安全(=自由の確保・拡大)」の両立に向けた将来の国連政策の在り方を展望することを目的とする。 初年度は主に基礎的な文献及び資料収集と研究会を通じて、国連の集団安全保障制度、国際人権保障制度など国連実務における関連分野の知識と情報を整理した。また、学術的な側面では、ケネス・ウォルツの『人間・国家・戦争』及びチャドウィック・アルジャーによる「平和の装置」概念に関する研究を読み込み、分析枠組みの精緻化を進めた。さらに、最も基本的な概念である「平和」を「消極的平和(=物理的暴力の克服)」と「積極的平和(=構造的暴力の克服)に分け、それを国連の主要な政策分野である平和・人権・開発に位置づける枠組み作りの作業を行った。日本外交の柱の一つである「人間の安全保障」概念に関する検討もスタートさせた。海外の現地調査(国連本部、米国、英国、アジアなど)を通じた資料及び情報収集にも着手をした。 これらの材料をもとに、国際法学、国際政治学、歴史学の学問的背景を持つ研究者と国連実務の経験を持つ研究者との相乗効果で、予備的な段階ながら「人間の平和と安全」の前進を国連外交の現場で推進する意義を提言する手応えを感じている。また、研究の予備的な成果は学術論文や一般紙誌への寄稿、国際会議などの場で随時発表をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究分担者の一人が年度途中で在外勤務となったこともあり、全員が集合しての研究会合の開催頻度が限られる結果となった。また、アフリカでの現地調査を計画していたが、政情不安と感染症問題などで実施の見送りを決定する必要が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
国連実務経験者と国際政治学、国際法、国際関係史のバックグラウンドを持つ共同研究者の間で過去70年の国連外交の流れを振り返り、現行の国連憲章における主要な目的概念である「国際の平和と安全の維持」と、本研究課題を通じて新たに提起することを構想している国際社会における「人間の平和と安全の前進」概念の定義や、政策手段としての「平和のための装置」概念の精緻化及び基本認識の共有のための議論を行った初年度の成果を踏まえ、本年度は、より積極的な現地調査も実施し、国連の主要な活動領域である平和協力活動、開発協力活動、人権支援活動の各分野の政策実施の状況について、研究者と実務者の双方より意見聴取を行い、資料・情報の収集を行うことに重点を置く。なお、国連ミッションの活動の調査は、本構想申請時にはシエラレオネ、インド、グアテマラを候補にしていたが、昨年度、シエラレオネを含む西アフリカ諸国でのエボラ出血熱の発生や中東・湾岸地域の政情不安など、国際情勢は常に流動することから、調査対象地域は現実的な観点から選定することにしたい。 折しも本年度は、国連創設70周年記念の年と重なるため、国内外で国連の歴史と現在の政策課題、そして今後の活動の展望などについての政府関係及び民間のイベントが多く開催され、そうした事業に関連した実務家や専門家の往来も活発に行われることが見込まれるため、本研究グループもそうした機会や流れを捉え、資料や情報の収集、意見交換などを行うとともに、本研究グループの研究成果を通じた知的貢献をしていきたい。 本研究グループのメンバーに若手研究者や大学院生を加えた研究会は、日程調整をして、実施する。また、国連関係者などのゲストを招いた公開のセミナーも開催する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究代表者は、大学役員(国際交流関係)を兼任している関係で本部経費での海外出張があり、ニューヨークの国連本部での意見交換や情報収集に関しては、本部関係の北米出張とつなげたことで経費の分担が成立するなどで経費が浮いた分がある。また、本研究代表者は、外務省の国連担当部門と連携し、日本政府主催の国連創設70周年関連行事や国連安保理改革関連事業に関与する結果、海外から多くの国連関係者(事務局関係者及び各加盟国代表)の本邦来訪の機会に有識者として討論する際に頻繁に本研究に係る情報収集をする機会があり、東京及び関西において資料や情報・意見の収集が可能となったことも次年度使用額が生じた理由につながる。 大きな経費の支出が予想されたアフリカ調査は現地情勢の不安定化や感染症問題もあり、また、東南アジアは日程調整がつかず、見送らざるを得なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
他財源との抱き合わせによる経費の節減や、外務省と連携した国連関係者との交流時の取材は継続するが、それによって生じた予算残は、融通が許される範囲内で他の項目の活動の強化に繋げるほか、初年度に未達成の海外現地調査などに活用したい。他方で、一部の地域では治安の混乱が続いているので、海外現地調査には慎重を期し、外務省筋による国連関係者の招へいと重ならないかたちで海外の有識者や実務家の招へいを通じた意見・情報収集などに切り替えていきたい。
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