研究課題/領域番号 |
26285172
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
千葉 悦子 福島大学, 行政政策学類, 教授 (30217244)
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研究分担者 |
手打 明敏 筑波大学, 人間総合科学研究科(系), 教授 (00137845)
村田 晶子 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (00329038)
浅野 かおる 福島大学, 行政政策学類, 教授 (10282253)
中田 スウラ 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (20237291)
辻 智子 北海道大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (20609375)
石井山 竜平 東北大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (30304702)
高雄 綾子 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 講師 (40509113)
朴木 佳緒留 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 名誉教授 (60106010)
鈴木 敏正 札幌国際大学, 人文学部, 教授 (70093648)
高橋 満 東北大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (70171527)
野元 弘幸 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (70261873)
新妻 二男 岩手大学, 教育学部, 教授 (80125476)
上田 幸夫 日本体育大学, 体育学部, 教授 (90103564)
天野 和彦 福島大学, うつくしまふくしま未来支援センター, 客員准教授 (80649533)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エンパワメント / 社会教育 / 公民館 / 原発被災者 / 震災ボランティア / ESD / ジェンダー / アクションリサーチ |
研究実績の概要 |
本研究では、原発被災による困難に直面しながらも、それに抗いながら、困難を乗り越える活動と学びの諸実践がどのように積み重ねられているか、そこに被災者のエンパワメントの姿をどのように描くことができるか、またそれを可能にする条件やシステムはどのように立ち現れているかを明らかにすることを課題としている。2015年度の調査研究実績の概要は以下のとおりである。 第一に、避難所が社会教育的視点及びジェンダー・ダイバースティの視点で運営されたかどうかを検証し、いずれの視点も多くの避難所で欠落していたこと、また、数少ないがいくつかの事例からはその有効性とそこで人々をつなぎ支える地域コーディネーターの力量形成の重要性を確認した。第二に、避難所運営の反省を踏まえて、防災教育教材開発や防災リーダー養成が始まっているが、それらの浸透状況を把握するだけでなく、それらの取り組みに主体的・協働的に関与しながら、効果を問う研究がなされた。第三に、被災者が一歩前に踏み出すには避難所での交流の広場や仮設住宅の集会所、地域コミュニティのつながりを維持する継続的交流のもつ意味が極めて大きいことが、事例調査から明らかにされた。また、ぶれない、逃げない、平等性のあるコミュニティリーダーの存在が浮かび挙がってきた。これらから、住民の生活と結びついた公民館・公民館職員の存在が求められていることが見えてきた。第四に、住民不在の地域復興が進められているが、本研究分担者は復興に向けた市民と研究者の共同学習や住民による復興計画づくり、行政・学校関係者による復興教育プランの策定の過程をアクションリサーチの手法で把握し、そこに学びあうコミュニティがあることを捉えた。第五に、ベラルーシの住民が「放射能」とどのように向き合ってきたかを見ることで福島の困難を乗り越える手がかりを得ようとする調査研究も始まっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度はやや遅れていたが、2015年度は研究分担者が各々進めてきたフィールド研究、研究チームで進めきている飯舘村調査研究、男女共同参画センター職員の力量形成を振り返るラウンドテーブル等の実践分析等の成果を学会発表や論文・著書に著し、着実に成果をあげてきているといえる。 ドイツやチェルノブイリとの比較研究が遅れていたが、ドイツ市民の学習についての研究成果の発表(2015年2月)、2015年10月末にはベラルーシ視察で、国家政策と並行して行われてきた住民による放射線防護知識の実践活動を調査し、原発事故後30年間の政策変遷の中で、住民の被ばくリスクへの向き合い方がどのように変化してきたのかを把握した。さらに、ベラルーシの汚染地区ホイニキ市の副市長の来日において、福島県南相馬市長や飯舘村の「ふくしま再生の会」の訪問を企画し、ベラルーシと福島の汚染地域の再生に向けた交流も実現することができた。 福島県内の公民館調査(アンケート)は、B(公民館・集会所における学習活動)チームを中心に調査票作成をほぼ終了し、平成28年度早々には着手できる状況にある。水俣等の国内における比較研究に向けた調査計画も具体化している。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度は、本科研の最終年度である。既に着手しつつある調査研究を円滑に遂行するとともに、2016年度後半には各々の調査研究のとりまとめ、及びそれら全体をとりまとめ、理論的・実証的な総括をしなければならない。そのために、研究会をこれまで以上に頻回に実施するとともに、補足調査の実施、それらの進行管理に努めなければならない。また、進行管理やデータ分析のために院生・学生アルバイトを強化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度に入って福島県内のアンケートによる公民館調査を具体化し、そのための郵送費・印刷費、データ入力・分析のための謝金を確保した。既に調査票も作成し、県教育庁の協力が得られ、いつでも調査が開始できる状況にあったが、年度末、及び年度当初は繁忙期のため避けた方が良いと判断し、2016年度の5月以降に延期した。また国内外の比較調査はプレ調査と位置づけ、チームとしての調査は次年度に繰り越すこととしたため、大幅に出費を抑えることができた。 また、2016年度は、本科研の最終年度であり、既に着手しつつある調査研究を円滑に遂行するとともに、補足調査、必要な資料・文献の収集、国内外チーム調査等で出費が予想されると判断し、2016年度に余裕をもって調査研究を遂行できるよう、次年度使用額をできるだけ確保するよう努めた。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度は最終年度のため、前半には補足調査、国内外比較調査、研究会等の実施、一連の調査研究のデータ分析、後半には調査研究をとりまとめ、研究全体の理論的・実証的な総括をしなければならない。そのために、研究会をこれまで以上に頻回に実施するとともに、補足調査の実施、それらの進行管理に努めなければならない。また、進行管理やデータ分析のためにかなりの時間を割かなければならず、院生・学生アルバイトを強化する必要がある。さらに図書出版につながる報告書を印刷して(300~500部)、社会に還元する予定である。また、市民・研究者向けのシンポジウムやワークショップも計画している。このため、データ分析のための謝金、報告書の印刷費、シンポジウム等の会場費・謝金等を十分確保する必要があると判断し、次年度使用額を大きく見積もった。
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