研究課題/領域番号 |
26287039
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柳田 勉 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任教授 (10125677)
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研究分担者 |
松本 重貴 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 准教授 (00451625)
野尻 美保子 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (30222201)
伊部 昌宏 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (50599008)
高橋 史宜 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60503878)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 素粒子論 / 超対称性 / 最小超重力誘導型超対称標準模型 / LHC現象論 / 暗黒物質現象論 |
研究実績の概要 |
代表者や分担者間のコヒーレントな研究活動が研究主目的に沿って行われ、様々な重要成果が以下の通り得られた。柳田は伊部との共同研究において、m_3/2=100 TeVのようなSUSYがかなり高いスケールで破れる宇宙論的必然性を離散的なR-対称性のある理論において発見した。またstring axion modelの宇宙論的問題が、SUSYが m_3/2=100 TeVのような高いエネルギースケールで 破れた場合、比較的容易に解けることを示した。松本は高エネルギー対称模型の予言であるWino暗黒物質の国際線形加速器ILCにおける探査可能性について研究した。Wino及びそのSU(2)パートナーからの標準模型粒子の対生成過程への輻射補正を調べることで、重心系のエネルギーの半分+200GeVまでのWinoが探査可能であることを示した。超対称模型で予想される粒子の質量が重い場合の超対称模型の真空の安定性について解析を行い、Higgs 粒子の結合係数に現れる補正の上限を調べた。また重たいフェルミオンによって、LHC実験で観測された Diphoton excess を説明する方法について考察を行う等 LHC 実験での新粒子探索についての研究を行った。伊部は松本と柳田と共にAMS-02が報告した反陽子宇宙線スペクトルが質量 3TeV 程度の Wino 暗黒物質の銀河内での対消滅によって非常に良く再現されることを示した。この質量は Wino 暗黒物質として非常に期待されている領域であり興味深い結果と言える。高橋はインフラトンの運動による自発的バリオン非対称性生成機構を提唱し、超重力理論における模型構築を行った。また柳田とともに超重力カオティックインフレーション模型が自然にシーソー機構を内包することを示し、高い再加熱温度に伴うグラビティーノ問題の解のひとつが高スケール超対称性である事を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、まさしく応募当初に予定していた通りに、研究がその主目的に沿ってアクティブに遂行された。例えば理論側面における研究では、超対称の破れのスケールと電弱スケールの差の重要な起源となり得るアイデアが提唱された。現象論側面における研究では、実観測により報告されたアノマリー(宇宙線反陽子異常)が、高スケール超対称模型の予言と驚くほど良く一致することが指摘された。これらの成果はどちらも大変重要であり、次年度以降の研究でさらに深く追及されることになると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究をさらに深化させ研究を推進する。具体的な内容は以下の通りである。高スケール超対称模型の理論的最大の問題は、そのスケールが電弱対称性の破れたスケールに比べて千倍も高いことである。何故そのように高いスケールを自然が選んだのか?柳田はこの問題にこたえるべく理論的な研究を行う。松本と伊部と共に高スケール超対称模型の予言するWino暗黒物質が、O(1)TeVの質量を持つ際に有効な探査方法と知られている矮小楕円体銀河を利用した間接探査に注目する。この銀河の暗黒物質分布の不定性を正確に取り入れた際にどの程度の感度でWino暗黒物質探査が可能であるかについて研究を行う。LHC 実験で観測された新現象のなかで、新粒子発見の証拠であると考えられるものがいくつか見つかっている。このような粒子の探索の可能性を追求するためにNLO のジェネレータの開発により精密なバックグラウンドとシグナル量の予言できる検討する。また縮退した新粒子の探索のための新しい手法を開発する。伊部は今後 LHCにおいて期待される種々の超対称粒子探索結果からの本研究課題である高いスケールの超対称模型に対する示唆について精査していく。また超対称統一模型における種々の問題と高いスケールの超対称模型の関係を調べ新たなヒントを探ることも目標としている。高スケール超対称性模型において、隠れたセクターのモノポールが暗黒物質となるシナリオを調べる。特にモノポール質量が100TeVからPeVスケールの場合に残存量が観測量を説明できる事が知られており、このスケールと超対称性の破れのスケールとの間の関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度(平成28年度)は代表者及び分担者が国内外で研究成果の発表を多数行う予定である。そのため本年度(平成27年度)の研究費使用を出来るだけ節約した結果である。
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次年度使用額の使用計画 |
上述の通り、次年度の研究成果発表に伴う旅費に使用する計画である。
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