研究実績の概要 |
芳村ら(2013)が構築した局所アンサンブル変換カルマンフィルタ(LETKF)と水同位体大気大循環モデル(IsoGSM)で構成された水同位体比データ同化システムを利用し、各種観測データの時空間分布を用いた観測システムシミュレーション実験(OSSE)を執り行った。人工衛星Auraに搭載したTES(Worden et al., 2007)やEnviSatのSCIAMACHY(Frankenberg et al., 2009)、地上観測網としてレーザー分光計が世界各地のGNIP観測点に設置された場合のOSSEについて解析した論文がJGR-Atmos誌に掲載された(Yoshimura et al., 2014)。
また、申請者が分担者の金とともに2013年6月より行っているつくば市真瀬の試験水田での水蒸気同位体比観測を継続した。降水や土壌水分の同位体比分析を行うための新たなレーザー分光分析計(L2120-i)を導入した。世界で初めての水田上での年間を通した水蒸気同位体比観測を行い、蒸発散フラックスの成分分離を試みたところ、LAI(葉面積指数)の増加と共に蒸散寄与率FTが上昇するが、その上昇率はLAIが低い時により大きいことが分かった(FT=0.67*LAI**0.25)。この研究成果はWater Resources Research誌に投稿し、現在改訂中である(Wei et al., submitted)。
また、本研究の応用として、アフリカ西部ニアメで観測された水蒸気同位体比の時間変化について、モデルシミュレーションを行い、季節進行に伴った同位体比の変動がENSOの影響でパターンが変化することを発見した。このことは、この特徴を用いることでニアメ付近のプロキシーデータからENSO記録を復元できる可能性があることを示唆している。この研究は、Atmospheric Chemistry and Physics誌に掲載された(Okazaki et al., 2015)。
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