今後の有効活用が期待されている海底資源の探査方法として,新方式の自律型海中ビークルの開発を実施した。すなわち,低コストで効率的な海底資源探査を実現するために,電磁探査用のOBEM (Ocean Bottom Electromagnetometer) を搭載するグライダー型海中ビークルによる自律探査システムを提案し,計画した機体の運動性能について調査するとともに,プロトタイプ機体による各種試験を実施して,その有効性を確認した. 前年度までの調査結果にもとづき,全長約1.6mのプロトタイプを製作し,その運動性能を水槽模型試験と実海域試験により確認した.水槽試験は九州大学応用力学研究所の深海機器力学実験水槽で実施した.今年度の研究では機体のロール角とヨー角を主とする横運動に着目し,定常滑空時の安定性の改善を試みた。すなわち,耐圧殻内部の機材の配置を最適化することにより重心高さを低下させるとともに,個別に制御可能な一組の水平尾翼を機体最後部に追加し,定常滑空時のロール角制御系を搭載した。さらに,波浪による外乱が大きく作用する投入作業時の安全性を高めるため,短時間で機体速度と深度を増加させるための重心移動に基づく運動制御系を開発した。 開発された機体運動の制御系の有効性は,鹿児島湾で実施した実海域試験により確認した。 定常滑空試験では実海象おいて開発した機体が安定して滑空することが確認され,横運動の安定性の改善効果が検証された。 今回開発された機体は,従来の海洋観測を目的とした巡航型の海中グライダーとは異なり,長大なOBEM用アームを持つ全翼型の形状をしている。また,機材の軽量化のためにメンブレン式の翼が用いられており,さらに,資源探査のために機体には着底を繰り返すことが要求される。これらの特徴を有する機体は他に例がなく,今回の実海域試験の結果は意義深いものであると考えられる。
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