研究課題/領域番号 |
26292017
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
小林 伸雄 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (00362426)
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研究分担者 |
中務 明 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (40304258)
伴 琢也 東京農工大学, 農学部, 准教授 (20325046)
廣瀬 大 日本大学, 薬学部, 准教授 (20513922)
宮島 郁夫 九州大学, 熱帯農学研究センター, 准教授 (20182024)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 園芸学 / 育種学 / ツツジ / 花器変異 / 菌根菌 / DNAマーカー / 土壌成分 |
研究実績の概要 |
ツツジの二重咲きはMADS-box; Bクラス遺伝子のPIの挿入変異に起因することを応用した二重咲き形質特異的DNAマーカーを開発し、学術論文として公表した。このDNAマーカーを活用して、イタリア、ベルギーの二重咲き品種の解析を行ったところ、同一のPI遺伝子変異が検出されたため、二重咲き形質に関して日本の古品種からの同一遺伝子変異の伝播が示唆された。一方、ツツジの八重咲きでは雄しべや雌しべの花弁化が確認され、Cクラス遺伝子のAG/PLEの配列欠損に由来する遺伝子発現の減少が八重咲きの花器形成に関与する新知見を学術論文として公表した。 花色分析では、野生種のアントシアニン構成別に花色とpHとの関係を調べたところ、シアニジン色素のみを持つ赤色花個体間ではpHの範囲が狭く、シアニジンとデルフィニジンさらにフラボノール色素を持つ紫色花個体間ではpHの範囲が広く、後者の個体では高いpHほどC*値(鮮やかさ)が減少することが明らかとなった。また、タイワンヤマツツジのブロッチ部分の赤紫色の発現には、アントシアニンとフラボノールとのコピグメンテーションが重要な要因であることを明らかにし、ブロッチ部分に含まれるフラボノールをquercetin 3-glucosideおよびquercetin 3-rhamnosideと同定した。 生育土壌に関して、島根県内のキシツツジ自生地土壌を分析したところ、可溶性アルミニウム含量はtr:0.4mg~24.0mg/100g乾土、pHは4.93~5.93で、典型的なツツジ科植物の自生地土壌の範囲であった。一方、菌根菌の分析では、島根県内自生のキシツツジ、沖縄県内自生のケラマツツジから分離されたそれぞれ154菌株、88菌株に関し、28S rRNAの部分塩基配列を決定した。現在行っている形態観察の結果と合わせて種同定を行い、菌根菌相を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外から収集したDNA、花色素、土壌、菌根に関するサンプルについて解析を行い、結果解析ならびに取り纏めが進行している。また、花器変異形質や花色素解析に関する複数の学術論文を国際学術誌等に公表している。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度として、26~28年度までの研究結果を踏まえて調査・サンプリングや分析を行い、遺伝子解析、根系・ERM菌解析を進捗させる。これまでの研究成果として開発された伝播過程の解析に有用な花器変異等に関するDNAマーカーの解析情報や花色素解析情報を活用し、さらに根系・土壌解析、ERM菌評価等との解析情報とあわせて、国内ならびに海外への品種伝播の解明を推進し、研究成果の取りまとめと公表を行う。 1)国内調査・情報収集:ツツジ自生地、ヒラドツツジ・クルメツツジ等の歴史的栽培地 2)花器形質や花色に関連する解析:遺伝子マーカー等による解析と品種発達・伝播過程の解明 3)ツツジ科植物自生地土壌の物理・化学性の調査;ツツジ自生地における菌根菌相の評価:キシツツジ・ケラマツツジ等
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次年度使用額が生じた理由 |
海外からの分析サンプルが郵送により入手調整できたこと、また、ポスドク研究員が従来の計画より早く異動したため、旅費や人件費に関して残額が生じたことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
サンプル解析に関する消耗品費や研究成果に関する印刷物作成に使用する計画である。
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