研究課題/領域番号 |
26292019
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
山内 直樹 山口大学, 農学部, 教授 (60166577)
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研究分担者 |
鈴木 康生 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (30335426)
今堀 義洋 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (40254437)
執行 正義 山口大学, 農学部, 教授 (40314827)
永田 雅靖 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所, 研究員 (60370574)
石丸 恵 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (90326281)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ストレス処理 / 青果物 / 品質保持 / 長距離輸送 |
研究実績の概要 |
26年度は,①各種ストレス処理による青果物の品質保持効果について,生理・生化学・分子生物学的側面から追究する研究,②ストレス処理された青果物の流通・貯蔵に伴う品質変化を外観,化学成分,分子生物学的マーカーにより多面的に捉え評価する研究,を実施した. 1.ストレス処理の品質保持効果:1)高温処理については,ブルーベリーの成熟段階における高温処理の影響について調べ,成熟果実では果皮のしおれの発生が抑制され貯蔵期間の延長が期待できた.しかし,未熟果実では着色が進行し貯蔵期間が短くなる傾向がみられた.2)低温処理については,ブロッコリーでの低温ショック処理(氷水浸漬処理)1時間で黄化抑制効果がみられ,この効果は処理による一時的な過酸化物の生成が関与しているものと思われた.3)UV-B処理については,ブロッコリーを用い,分子シャペロンと膜安定性機能を持つ低分子熱ショックタンパク質(sHSP)のUV-B処理による影響ついて調べ,処理によりsHSP関連遺伝子とsHSP量が増大することを認めた.4)エタノール処理についてはエタノールとアセトアルデヒドの生成・変換を抑制したトマト形質転換体のホモ系統を行い,エタノールがエチレン非依存の追熟に及ぼす影響を調べた.5)過酸化水素処理については,ピーマンを用い,熟度の相違による過酸化水素の影響について調べた.過酸化水素含量は成熟に伴い増加し,一方,スーパーオキシドとスーパーオキシドディスムターゼ活性は緑熟からの追熟過程で一時的増大がみられ,それらの傾向には関連性が認められた. 2.分子マーカーによる品質評価:1)ブロッコリーを用い,分子量の異なるHSPの遺伝子をクローニングし,高温処理に伴うそれら遺伝子の発現変化を調べ鮮度マーカーとしての可能性を検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度は研究の初年度ということで当初計画に従って実験を進めた.対象とする青果物については変更もあったが,各処理に関しての調査もおおむね順調に進んでいる.また,27年度に実施予定のタイからの青果物の輸送に関しても,タイの研究者と打合せを行い実施計画を検討した.
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今後の研究の推進方策 |
27年度はストレス処理による青果物の品質保持効果並びに品質評価について,以下の通り検討する.また27年度はタイの研究協力者を招きストレス処理による共同実験を進める. 1)高温処理:高温処理により品質効果がみられたブルーベリーを用い,適切な高温処理条件を検討し,アントシアニン生合成系酵素遺伝子の発現解析を行う.2)低温処理:ブロッコリー,キュウリなどを用い,低温ショック処理による品質保持効果を調べ,その機構について検討する.3)UV-B処理:ブロッコリーを用い,UV-B処理による品質保持効果について,特に低分子熱ショックタンパク質発現による影響を中心に調べる.4)エタノール処理:エタノールとアセトアルデヒドの生成・変換を抑制したトマト形質転換体を用い,追熟に及ぼす影響を調べる.さらに,熱帯果実等の品質保持に及ぼすエタノールの影響について調べる.5)過酸化水素処理:ピーマンの過酸化水素処理によるアスコルビン酸を中心とした抗酸化機構の様相を明らかにし,さらにアスコルビン酸含量の少ないナスを用い,過酸化水素処理による反応を調べ,ピーマンと抗酸化機構の比較検討を行う.6)品質評価:ブロッコリーにおいて明らかにした高温処理により発現する遺伝子鮮度保持マーカーの貯蔵に伴う変動について調べ,品質評価に適切な遺伝子クローンを選抜する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由については研究担当者でそれぞれ事情は異なるものの,主な要因は以下である.1)当初の計画より実験が順調に進んだため.2)研究担当者が他の所属機関に移動することとなり,26年度は当初計画より実験を早く終了させることとなった.3)実験補助のために人件費を計上したが,予定より実験が順調に進み雇用する必要がなくなった.4)学術論文の英文校閲の費用を計上していたが,26年度は執行するまでには至らなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
27年度においては研究計画の2年目となり,26年度の結果を踏まえ実験が進んでいくため,繰り越された物品費等は順調に実験の遂行のため執行されるものと考えている.また,研究遂行のための実験補助も26年度より必要となり,さらに,26年度のデータに基づく学術論文の作成があるため,英文校閲費用等も問題なく執行されるものと思われる.
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