研究課題/領域番号 |
26293079
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
小西 登 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (20145832)
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研究分担者 |
藤本 清秀 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (50264867)
藤井 智美 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (50623477)
島田 啓司 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (90336850)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヘパラナーゼ / 前立腺progenitor cells / 前立腺癌 / IL-6 / autophagy |
研究実績の概要 |
我々はこれまでに、ヘパラン硫酸プロテオグリカンであるsyndecan-1が前立腺癌におけるcancer progenitor cellsの維持に不可欠な分子として機能し、この関連シグナルを遮断することで、癌の増殖や浸潤、転移が強く抑制されることを見出した(Shimada K and Konishi N et al. J Pathol 2013)。平成26年度の研究では、syndenca-1を活性化する唯一の酵素、heparanaseの前立腺癌発癌に及ぼす影響を臨床病理学的あるいは分子生物学的に解析した。いわゆるcancer progenitor cell theoryでは、intermediate cellsに豊富に含まれるprogenitor cellsが癌化して前立腺発癌をもたらすと考えられている。Intermediate cellsの生物学的性状を示すprostate epithelial cellsを用いた培養実験にて、heparanaseはbasal cellsからintermediate cellsの誘導をもたらし、かつIL-6を介して細胞のautophagyを抑制することを確認した。Autophagyは自己貪食作用で、腫瘍化を抑制するメカニズムとして知られる。Heparanaseは、progenitor cellsを豊富に含むintermediate cellsを誘導し、かつ腫瘍化抑制シグナルを阻害することで、前立腺発癌に深く関与する可能性がある。前立腺全摘出標本50症例を用いた免疫組織化学的検討の結果、heparanaseはintermediate cellsが多数含まれる萎縮腺管を中心に強く発現することが分かった。また、萎縮腺管は背景間質にリンパ球をはじめ炎症細胞浸潤を伴うことが多い。今回の結果は、炎症を基盤とした発癌を、heparanaseという観点から説明できる要素を含む点でも興味深い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
病理組織化学的検討については、十分な症例数を蓄積し統計学的解析を終えている。また、以上の検討に加え、分子生物学的検討も並行して行うことができた。Heparanase阻害剤の治療効果を検討するため、前立腺発癌モデル動物(TRAMPマウス)を用いた動物実験に着手し、現在条件検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究実績から、heparanaseはprogenitor cellsを豊富に含む癌発生母地と考えられるintermediate cellsの誘導とIL-6, autophagy抑制を介して前立腺発癌に重要な役割を担うことを明らかにした。今後は、前立腺発癌モデル動物(TRAMPマウス)をはじめ前立腺癌発症モデル動物にheparanase阻害剤を投与し、発癌抑制効果の有無を検討するとともに、progenitor cellsの癌化やIL-6, autophagyの関与について解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前立腺癌発症モデル動物、TRAMPマウスにheparanase阻害剤を投与し、投与後数週間後にsacrificeして前立腺発癌、特に管内増殖性病変(前癌病変PIN相当)への抑制効果を認めるか否かを検討する。
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次年度使用額の使用計画 |
同病変におけるIL-6下流のリン酸化STAT3発現やautophagy関連マーカー(LC3, p62)発現を検討する。
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