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2014 年度 実績報告書

神経障害性疼痛モデル動物を用いた「痛みの客観的評価」の研究基盤の確立

研究課題

研究課題/領域番号 26293129
研究機関九州大学

研究代表者

植田 正  九州大学, 薬学研究院, 教授 (90184928)

研究分担者 白石 充典  九州大学, 薬学研究院, 助教 (00380527)
阿部 義人  九州大学, 薬学研究院, 准教授 (60315091)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワード神経障害性疼痛 / P2X4 / モノクローナル抗体 / Fab
研究実績の概要

神経障害性疼痛は手術や疾患等に引き起こされる難治性疼痛で、世界で約2000万人が罹患している。痛みは患者の主観的な感覚の相対値で決定されているので、神経障害性疼痛の治療薬の開発や治療効果を評価する上では、神経障害性疼痛の客観的な指標が必要である。この神経障害性疼痛にはミクログリア上のP2X4受容体の発現が密接に関わっていることがわかっている。本研究はヒトの神経障害性疼痛の客観的な評価法の開発の研究の基盤として、神経障害性疼痛疾患病態モデル動物(ラット)の脊髄ミクログリア細胞膜に過剰発現しているP2X4分子をイメージングすることを目的とする。
P2X4受容体のX線結晶解析構造はゼブラフッシュ由来のものが唯一報告されている。P2X4分子のヘッドドメイン(HD)領域に結合する抗体はこれまで調製済みなので、リコンビナントHDを調製し、核磁気共鳴装置を用いてその溶液構造を解析した。その結果、HDの主鎖のおれたたみ構造はゼブラフィッシュのHDとほぼ同一であった。また、HDと亜鉛、銅イオンとの相互作用は、ラットのP2X4分子におけるこれらのイオンの生理機能を説明することができた。そこで、HDを融合蛋白質としてラットに免疫し、産生したポリクローナル抗体を定法によりハイブリドーマにした。これらのハイブリドーマが産生する抗体でラットHDに強く結合するものを数種類選別し、それらをモノクローナル化した。それらのモノクローナル抗体のFab領域の一次配列を定法により解析し、大腸菌を用いてリコンビナントFabを調製した。モノクローナル抗体由来のFabとリコンビナントFabとHDの結合をELISAや表面プラズモン共鳴法にて解析したところ結合力は同程度であった(Kd=数十nM)。また、この分子は培養細胞が発現するラットインタクトP2X4分子に強く結合することもわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ラットP2X4分子に結合するモノクローナル抗体は2013年(J.Biochem.)に報告しているが、この抗体はウエスタンブティングなどには利用可能であるが、ラットインタクトP2X4分子には結合しない。今回は抗原にヘッドドメインを用いて抗体を調製することにより、ラットインタクトP2X4分子に強く結合するモノクローナル抗体が産生していることを実証できた。現在市販されている白血病治療薬抗体のリツキサンの標的蛋白質との複合体との解離定数(Kd)は数nMであることから、今回得られた抗体は選択性、結合力の点から、かなり優れた抗体であることがわかった。これらの結果は、本研究目的実現に向けて確かなマイルストーンであると評価できる。

今後の研究の推進方策

今回得られた抗体を用いて、インタクトラットP2X4分子を発現する培養細胞を用いてP2X4分子をイメージングできるかどうかを評価する。その結果を踏まえて、神経障害性疼痛疾患モデルマウスの脊髄ミクログリアをイメージングできるかどうかを評価する。
一方、ヘッドドメイン(HD)にさらに強く結合する抗体(Fab)を調製するために、HDと今回得られた抗体のFabとのX線結晶解析を実施する。その結果を基にHDに対してより結合力の高い変異体Fabをデザインし、リコンビナントFabを調製する。X線結晶解析は質のよい結晶がでないと解析できないので、バックアップ実験として、in Silicoのドッキングモデル実験により得られた結果をもとに、変異体Fabをデザインし、リコンビナントFabを調製する。
変異体Fabについては、HDとの相互作用を滴定型熱量計、表面プラズモン共鳴法などを用いて、熱力学的、速度論的に結合過程を評価し、その結果をフィードバックして、インタクトラットP2X4に対して強く結合するFabの調製を行う。

次年度使用額が生じた理由

2014年度に得た研究結果を論文に投稿するため別刷料を計上していたが、商業誌(FEBS Lett.)に採択され、別刷が30部無料であったため、若干額残余がでた。論文がどのタイミングで、どの雑誌に採択されるかは予想が難しく、別刷料も雑誌により価格が違うので、残余金がでることは予想できなかった。本研究は2015年度も継続であり、少額の繰り越しは認められているので、次年度に有効に執行すべきと判断したため。

次年度使用額の使用計画

プラスチック製消耗品の購入資金の一部に充当する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Solution structure of the rat P2X4 receptor head domain involved in inhibitory metal binding2015

    • 著者名/発表者名
      Igawa T, Abe Y, Tsuda M, Inoue K, Ueda T.
    • 雑誌名

      FEBS Lett.

      巻: 589 ページ: 680-686

    • DOI

      10.1016/j.febslet.2015.01.034.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] P2X4受容体細胞外ドメイン認識抗体の蛍光ゲルろ過法によるスクリーニング系の確立2014

    • 著者名/発表者名
      永井咲妃、白石充典、井川達弘、斎藤秀俊、山下智大、津田誠、井上和秀、阿部義人、植田正
    • 学会等名
      第25回クロマトグラフィー会議(京都)
    • 発表場所
      京都大学(桂キャンパス)船井哲良記念講堂
    • 年月日
      2014-12-12
  • [学会発表] P2X4受容体細胞外ドメイン認識抗体のスクリーニング系の確立2014

    • 著者名/発表者名
      永井咲妃、白石充典、井川達弘、斎藤秀俊、山下智大、津田誠、井上和秀、阿部義人、植田正
    • 学会等名
      日本生化学会九州支部会
    • 発表場所
      九州大学コラボステーションI
    • 年月日
      2014-05-18

URL: 

公開日: 2016-06-01  

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