研究課題/領域番号 |
26293328
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
岡田 尚巳 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00326828)
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研究分担者 |
岡田 浩典 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (80416271)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脳神経疾患 / 遺伝子治療 |
研究実績の概要 |
(1)高規格AAVベクター製造法の開発:前年度に引き続き、大規模製造に適したプロトコルを検証し効率化を推進した。高密度培養に向け、浮遊培養用HEK293細胞を用い、培地、培養条件の検討を行い、接着細胞と同等の生産効率にてベクターを製造することに成功した。さらに、アデノウイルス初期遺伝子群、SV40由来T抗原、E1B19kの機能を補完することでAAV複製効率を増強させるBcl-xL遺伝子を導入し、機能強化型の不死化した浮遊培養用HEK293細胞を作製した。 (2)脳神経疾患における新規遺伝子導入法とタンパク質補充療法:引き続き、脳神経疾患治療への応用研究を推進した。間葉系幹細胞において1型AAVベクターの導入効率が高いことを確認し、炎症制御因子発現間葉系幹細胞を作製し、培養細胞の系で発現を確認した。同様に、遺伝子修飾歯髄幹細胞を作製し発現を確認した。MCA閉塞SDラットにおいて、虚血再灌流後に外来遺伝子のex vivo導入を行った間葉系幹細胞や歯髄幹細胞を血管内投与し、TTC染色にて梗塞体積および浮腫体積を測定し、ペナンブラの保護による治療効果を確認した。 (3)ベクター産生型標的細胞によるin situ遺伝子治療: 引き続き、間葉系幹細胞や歯髄由来幹細胞を応用したベクター産生型細胞の機能を検証した。ルシフェラーゼ発現ベクターのコンポーネントを間葉系幹細胞や歯髄由来幹細胞に導入し、培養細胞の系で遺伝子発現およびベクター産生を評価した。マウス皮下腫瘍モデルにてベクター産生型MSCsを腫瘍内投与し、遺伝子発現増幅効果を確認した。この際、有害事象は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高密度培養とベクター複製が可能な新規浮遊系ヒト細胞の開発を推進した。この細胞を用い、接着細胞と同等の生産効率にてベクターを作製することに成功した。また、野生型と異なり組換え型では染色体に挿入されにくく従来はin vivo法を中心に使用されていたAAVベクターをex vivo法に応用することで、染色体を傷つけずに安全に細胞治療を実施することが可能となった。脳組織への遺伝子導入や脳神経疾患の治療実験において、安全に長期間の効果が期待できる。また、間葉系幹細胞に加え歯髄由来幹細胞についても、ウイルス産生効果の検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
従来ベクター製造において高密度培養とウイルス複製に用いられていた昆虫細胞においてラブドウイルスの汚染が指摘されており、高密度培養とベクター複製が可能な新規浮遊系ヒト細胞の開発が急務である。本研究においては従来培った経験の蓄積を応用し、高機能な浮遊系ベクター複製細胞を開発する。また、間葉系幹細胞に加え歯髄由来幹細胞についても、ベクターコンポーネントの導入とベクター複製条件を検証することで、腫瘍性疾患や炎症性疾患の治療研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
高密度培養とベクター複製が可能な新規浮遊系ヒト細胞の開発が順調に進行し企業への技術移転に至った。この基盤技術を応用し、さらに様々な血清型での条件検討やGMP製造が期待される。
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次年度使用額の使用計画 |
今回開発した高密度培養とベクター複製が可能な新規浮遊系ヒト細胞を応用し、より大規模での試験製造を実施することで、GMP製造に向けた課題を検証する。また、間葉系幹細胞や歯髄由来幹細胞へのベクターコンポーネントの導入とベクター複製条件を検証することで、腫瘍性疾患や炎症性疾患の治療研究を推進する。
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