研究課題/領域番号 |
26293374
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉田 茂生 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50363370)
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研究分担者 |
石橋 達朗 九州大学, 大学病院, その他 (30150428)
中尾 新太郎 九州大学, 大学病院, 助教 (50583027)
佐々 由季生 福岡大学, 医学部, 講師 (80580315)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | テネイシンC / 網脈絡膜増殖 / ペリオスチン |
研究実績の概要 |
黄斑円孔、黄斑上膜、PDR患者の硝子体手術の際に硝子体サンプルを採取した。ELISA法により硝子体中のテネイシンC、ペリオスチンとVEGFを定量した。また、手術中に採取した増殖組織や、マウス酸素負荷網膜血管新生(OIR)モデル網膜を用いてテネイシンC、αSMA、CD34、CD31、GFAP、integrinαVの免疫染色を行った。培養ヒト血管平滑筋細胞(VSMC)を低酸素暴露後、テネイシンC遺伝子発現を定量した。さらに培養ヒト網膜血管内皮細胞(HREC)を用いて、テネイシンC蛋白の増殖、遊走、管腔形成への効果を検討した。 PDR硝子体ではコントロールと比較して、テネイシンC濃度が有意に高値であった(p<0.01)。PDRの疾患責任分子であるペリオスチンとテネイシンCの硝子体中濃度は有意に相関した(p<0.01、r=0.439)が、VEGFとテネイシンCは相関がなかった(p<0.05、r=0.181)。増殖組織を伴うPDRでは、増殖組織のないPDRに比し有意にテネイシンC濃度が高値であった(P<0.05)。増殖組織の免疫染色では、テネイシンCはαSMAおよびCD34陽性細胞上のintegrinαVと共染色を認めた。また、マウスOIRモデルにおいて、テネイシンCは虚血網膜内のαSMA陽性細胞や網膜上新生血管中のαSMAおよびCD31陽性細胞と共染された。培養VSMCの低酸素暴露後3時間でテネイシンC遺伝子の発現は有意に高値を示した(P<0.05)。さらにテネイシンCは容量依存的にHRECの増殖、遊走、管腔形成を促進した。 テネイシンCは虚血網膜中の血管平滑筋や網膜新生血管の周皮細胞から産生され、integrinαV受容体を介してパラクライン的に網膜血管新生を促進する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テネイシンCは網膜前血管増殖に促進的に作用することを明らかにできた。テネイシン抑制二本鎖核酸の配列の最適化も順調にすすんでいる。国内、国際学会で発表を行い、成果を発信した。さらに脈絡膜繊維血管増殖とテネイシンCの関与についても順調に検討が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1.ペリオスチンnkRNAの網膜前血管増殖抑制効果:マウスOIRモデルを用いて、血管新生誘導時にペリオスチンnkRNAを硝子体内投与する。投与5日後に、網膜前血管増殖抑制効果を定量化し、ペリオスチンsiRNA、中和抗体、スランブル配列nkRNA投与群との比較検討も併せて行う。 2.ペリオスチンnkRNAと抗VEGF抗体の相加的効果の評価:マウスCNVモデル、OIRモデルそれぞれにおいて血管新生誘導時にペリオスチンnkRNAと抗VEGF抗体の同時硝子体内投与を行い、網脈絡膜増殖組織抑制効果を定量化するとともに、ペリオスチンnkRNA単独及び抗VEGF薬単独投与群と比較検討する。 3.テネイシンC標的nkRNAの網脈絡膜線維血管増殖の抑制効果の検討:In vitroアッセイ系での最適化テネイシンC nkRNAの細胞増殖能、遊走能、接着能、管腔形成の抑制効果の評価、In vivo OIR、CNVモデルでのnkRNAのテネイシンC発現抑制効果および線維血管増殖組織抑制効果の評価を順次行う。また、テネイシンC nkRNAとペリオスチンnkRNAや抗VEGF抗体の同時投与による増殖抑制の増強効果についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
テネイシンCの網膜繊維血管増殖の分子機序解明が想定以上に進み、動物飼育費、試薬代などが当初予想より少なめにすんだため。
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次年度使用額の使用計画 |
テネイシンCの脈絡膜線維血管増殖の分子機序解明における細胞培養実験、動物飼育費用などにあてる。また、研究の進行を促すため引き続きテクニカルスタッフを1名雇用する。研究成果を積極的に学会発表し、論文投稿を行う。
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