研究課題/領域番号 |
26300010
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
永田 好克 大阪市立大学, 大学院創造都市研究科, 准教授 (70208023)
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研究分担者 |
園江 満 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (90646184)
横山 智 名古屋大学, 大学院環境学研究科, 教授 (30363518)
星川 圭介 富山県立大学, 工学部, 講師 (20414039)
柴山 守 京都大学, 国際戦略本部, 研究員 (10162645)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / メコン河中流 / 東北タイ / 生活誌 |
研究実績の概要 |
本年度も調査対象地であるタイ国ナコーンパノムを中心に、現地共同研究機関であるナコーンパノム大学の研究協力者らとともに以下の現地調査や議論をすすめた。 7月は、ソンクラーム川沿いの生業の変化に関する調査と議論を行った。8月は、淡水魚の加工を中心とした保存食品に関する調査と議論を行った。9月は、特に道路交通の発達以前の村民の生存戦略にかかわる通商経路を中心とした調査と議論を行った。これらの調査は、初年度からの現地調査に引き続くものとして、ナコーンパノム県内で実施した。 2月の調査では、ここまでに行ってきた調査対象村落の位置づけを相対化する一助とするために、調査対象域を隣県にまで拡大し、ナコーンパノム県内と共通する民族を中心とした現地調査を行った。この調査ではナコーンパノム県内で進めてきた調査で得た情報に関して解釈の再検討が必要となる事項が複数判明したことに意義があった。引き続き3月の調査で、民族自称に関する検討のための基礎語彙調査や、食文化に関する調査を行った。これにより、淡水魚の保存食に関して民族別に複数の調査データを得た。また、基礎語彙調査で収集した録音データの文字化は現地研究協力者とともに作業を進めている。 これらの調査対象域での現地調査のほかに、現地での入手が困難であることが判明した資料の探索と収集を米国の議会図書館等で行った。約半世紀前に米軍が主体で行ったこの地域の調査に基づいた県勢や、村落の存立時期や民族固有の名称による村落名を確認する手がかりとしての一世紀前後前の地図などである。特に地図資料については、当該地であるタイ国内での所在が確認できないものが多数あることが2月調査時に判明したため、この点については今後改めて調査をする必要性を見出したところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題当初に現地調査を行った対象は、現地においてもその民族アイデンティティーが広く現地社会に認知された村落からであったが、これらの積極的に存在を発露する村落だけでなく、生活誌としての慣習や生活文化を持続的に維持してきた村落も調査対象とすることを考慮してきた。この存在が目立たない村落を選ぶことが円滑に進むとは限らないことが、進捗に影響を及ぼしている面が少なからずある。一方で目立つ村落ばかりを調査対象として重ねても既知の知見を越える発見を見出すことが容易ではないことは明らかであることから、本課題が一部基金であるという研究実施上の許容範囲内での遅れを活用した対応であると考えている。 また海外調査で必須の現地研究協力機関との調整において、当初現地研究協力機関で少なからぬ運営上の不安定さが続き、現地調査の進行に苦慮してきた点も止むに止まれぬ事情である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は必要に応じて補充調査を行いつつ、これまでの調査を総括する期間と考えている。これまで現地調査としてタイにおける調査を現地研究協力者と進めてきたが、カウンターパートとしての彼らが調査内容を別の視点から相対化する機会を用意する。具体的には、8月に現地研究協力者4名を日本に招き、本研究課題の研究会で議論を深めるほか、本課題に関連する研究機関や諸施設において研鑽を行う機会を設ける。海外調査は現地研究協力者の協力が不可欠であり、本課題だけでなく長期的な視野においての協力関係の構築は重要である。 これまでに収集済みのデータのうち、基礎資料としての価値が高い基本語彙音声データについては文字化の作業を引き続き進める。 また、古い地図資料等、本研究課題だけでなく幅広く今後活用が可能な資料の探索についても引き続き方策を検討する。 調査対象地における研究成果還元として、ナコーンパノム大学が主催する国際会議への参加を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題はタイ国ナコーンパノム大学の当時の学長の全面的な協力が期待できることとして開始したが、開始直後に長期にわたり学長不在の状態が続いた。日本側研究者に相対する現地研究協力者が固定化しない事態が続き、実質的な現地調査の着手が遅延した。また日本側がチームとして現地調査日程を組むことに苦労する要因が発生したため、研究の進捗に遅れが生じた。そのために、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は必要に応じた補完的な現地調査のための経費、現地研究協力者を日本へ招いての研究議論のための経費、これまで収集済みのデータのうち今後基礎資料としての保存価値が高い基本語彙音声データの文字化作業の経費、調査対象地域の過去の環境を復元するために有益な資料を探索するための経費、現地の大学で主催予定の国際会議への参加経費として使用する計画である。
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