研究課題/領域番号 |
26301038
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
沼口 博 大東文化大学, 文学部, 教授 (80102193)
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研究分担者 |
横山 悦生 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (40210629)
穴見 明 大東文化大学, 法学部, 教授 (70144102)
菅沼 隆 立教大学, 経済学部, 教授 (00226416)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 徒弟訓練 / 職業教育・訓練 / コーディネーター / 後期中等教育 / トレイニング・センター |
研究実績の概要 |
今年度はスウェーデンとノルウェーにおける後期中等教育段階における徒弟訓練実態と学校での学習との関係を中心に調査、研究を行った。またフィンランドでは後期中等教育後の職業教育・訓練の実態について調査を行った。 まず、スウェーデンとノルウェーにおける徒弟訓練については、基本的にスウェーデンの場合、あくまで後期中等教育に在学しつつ学校外の企業に徒弟訓練に従事しており、責任は全て学校側にある(生徒として保護される)と言うスタンスに比べ、ノルウェーでは2+2という制度から前期の2年間は学校で理論と実技の訓練、後期の2年間は学校からまったく離れて職業現場で徒弟訓練に臨むと言うことであった。そのためにノールウェーでは賃金が支払われる(3年目の前半は約35%、後半は45%、4年目の前半は55%、後半は75%の正規労働者の賃金)と言うことであった。学生としてではなく半分は社会人として徒弟訓練に臨むことになり、スウェーデンのように学生としての身分はなくなるということであった。こうした違いの半面で、生徒と職業現場を調整する仲介組織が両国には存在していて、スウェーデンでは学校にコーディネーターがいて、徒弟訓練の現場と生徒間の調整を行っているということであった。ノールウェーではトレイニング・センターという民間のセンターがこうした機能を果たしており、職業能力を確実につけるために調整をしており、教育・訓練に熱心に取り組み企業であるか否かもチェックしていると言うことであった。さらにノールウェーでは後継者を必要とする企業がこうした徒弟訓練に熱心に取り組んでおり、上手くマッチすれば徒弟訓練修了者をそのまま雇用することもあると言うことであった。社会的なニーズと若者のニーズを一致させるための期間としての調整機関が重要な要となっていることが理解できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北欧各国の教育制度上の差異についての概観は前年度行ったが、今年度は徒弟訓練の実態の違いについてスウェーデンとノールウェーの実態を明らかにすることが出来た。いずれの国でも調整機関や調整役の存在が大きいことが分った。残るはデンマークとフィンランドにおける状況を明らかにすることであり、他方、こうした徒弟訓練が上手く機能している地域は限られていることもその共通点となっているように思われる。徒弟訓練が上手く機能する地域特性や地域の産業構造、人々の職業観などの検討が必要かと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題としては、上記のように地域間による徒弟訓練に対する評価の違い(生徒だけではなく親や教師、市民レベルでの)や、中等教育後の進路希望の差、産業構造の差など、徒弟訓練を重視するのか軽視するのかなどの背景についても調査を通してして明らかにする必要があるものと思われる。 また、労働市場とそれに対応する労働政策としてのあり方、社会保障の一環としての職業能力の育成方策の違い、地方自治や学校教育制度、労働政策、経営者と労働団体、職能団体などの調整などについても実態を明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、国際会議の開催と研究計画に基づく海外調査の経費がかさみ、40万円の研究費の前倒しをすることになった。しかし、前倒しの金額の単位が10万円単位であったため数万円の残金が生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の海外調査で、より精密に調査を進めていく計画を立てているのでそこで使用する予定である。
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