研究課題
これまでに構築した企業取引ネットワーク上でのお金の流れの統合シミュレーションモデルに関して、自然進化戦略に基づいてパラメータの最適推定を施し災害のシミュレーションを行った。実例として選んだのは2018年9月に発生した北海道胆振東部地震によって発生した北海道全域に及んだ停電被害の推定である。停電している間はその地域の企業活動が停止するという仮定の下で北海道の停電の影響が全国に及ぼす影響を調べたところ、北海道内の直接的な被害額約160億円のおよそ3倍程度の被害が全国に及んでいたことが推定された。このように、ある地域の災害に関して直接的な被害の3-4倍の被害が企業ネットワークを介して全国的に波及するということは、東日本大震災や熊本地震の事例に関するシミュレーションでも共通して見出されており、今後、災害に対する対策を考える上での重要な発見である。システムロバストネスの視点から仮想的に上記のモデルのパラメータを変えてシミュレーションを繰り返し、システムが不安定化する現象に関しても追求した。その結果、取引相手に大企業を選ぶ嗜好性を表すパラメータがある程度大きくなると、お金の流れが大企業を中心としたネットワークの周囲にのみ局在化するという相転移現象が観測された。また企業の合併に関しても、大企業同士の合併に関する嗜好性が強すぎると、中間層が喪失し、ひとつの大企業に多数の小企業が群がるような不安定な企業生態系に陥ることがシミュレーションによって明らかになった。さらに企業の成長過程をより精密に記述するため、売上/従業員数/取引相手数の3つの座標軸で企業を特徴づけ、その3次元空間の中での成長過程を表す平均流のパターンをデータに基づいて構築した。その結果、従来知られていたスケーリング関係を満たす線上にアトラクターがあり、そのアトラクターから離れた所には倒産が起こりやすい領域があることが確認された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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証券アナリストジャーナル
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