研究課題/領域番号 |
26310211
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
松本 眞 広島大学, 理学研究科, 教授 (70231602)
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研究期間 (年度) |
2014-07-18 – 2019-03-31
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キーワード | 超一様性 / 擬似乱数 / 準モンテカルロ法 |
研究実績の概要 |
本研究課題のテーマは、超一様点集合を諸科学で実用できるかたちで普及させることである。今年度は、諸科学で利用される「多次元正規分布の度数分布の数値計算」を中心とした研究を行った。昨年度からの継続的な実験により、多くの場合で、MathematicaやRといった標準的ソフトウェアに採用されているアルゴリズムにくらべ、本研究によるアルゴリズムは数十倍高速であることがわかった。得られた理論と実験結果は論文にまとめつつある。さらに、信頼区間についての研究をおこなった。諸科学で実用されるためには、得られた数値の信頼区間を求めることがしばしば有用だからである。しかし、超一様点集合から得られる数値積分結果の信頼区間を求めるのは、それほど簡単ではない。本研究では、ランダマイゼーションと呼ばれる手法を用い、複数の数値積分結果を求め、そこから信頼区間を求める実験をおこなった。信頼区間を求める方法については、(1)厳密な評価によるもの,(2)ある確率変数の分布が正規分布で十分良く近似できるという楽観的仮定によるもの,の2種類がある。 (1)で得られる信頼区間は数学的には厳密だが広くなりすぎて実用性にとぼしい。本研究でとった手法は(2):すなわち「ランダマイゼーションで得られる数値の分布が正規分布で十分良く近似できるであろう」という、よく利用されているものである。数値実験的には、高速性を保ちながら実用上十分な近似的信頼区間を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
典型的な超一様点集合は、ディスクレパンシーという評価指標を用いて構成する。本研究課題では、現在、被積分関数が多次元正規分布の累積関数である場合を実験し、一般のユーザーに使える形での実装を開始している。我々が利用している評価指標はWAFOMと呼ばれるもので、その中でも大堀・芳木により開発されたパラメーター付きWAFOMが、少なくとも多次元正規分布の密度関数の積分については既存のアルゴリズムよりも数十倍高速であることを複数の実験で確認した。さらに、統計学においては信頼区間を求める必要があることが多く、このために上記の手法をランダマイズ化した実験を導入している。ランダマイズによる信頼区間の計算には困難な点も多いが、現在実験中のモデルでは信頼区間がほぼ正しく求まっている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題のテーマは、一様ランダムな点集合を超一様点集合に置き換えることで諸科学での利用を図る点にある。すでに正規分布など諸科学で利用されている確率分布で実験的には成功を収めている。実際、正規分布の累積関数の数値計算に関しては、Mathematica, R言語などの標準計算アルゴリズムよりはるかに高速である。したがって、すでに潜在的需要があると思われるので、配布可能な実装プログラムを作成し、実験結果をもとに論文を執筆するのが急務であると考えている。上記の信頼区間の計算の問題についても、理論と実験の両面から研究を進める。統計学を通じて、諸科学との連携をある程度果たしつつあるが、それ以外にもマルコフ過程モンテカルロなど、シミュレーションの諸分野での超一様点集合の利用を図りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
QMC積分アルゴリズムに信頼区間計算法を実装するのが遅れたため、この分の性能評価および成果発表ができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
信頼区間計算法などを実装し、実装の性能を評価する計算機を購入する。また、実用に適した成果を発表するための旅費に使用する。
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