研究課題/領域番号 |
26310317
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
山崎 俊正 独立行政法人農業生物資源研究所, 生体分子研究ユニット, ユニット長 (40360458)
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研究分担者 |
藤原 健智 静岡大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80209121)
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研究期間 (年度) |
2014-07-18 – 2017-03-31
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キーワード | 環境調和型農林水産 / 地球温暖化ガス排出削減 / 分子標的硝化抑制剤 / 構造ベース創農薬 |
研究実績の概要 |
蛍光性電子受容体を利用したヒドロキシルアミン酸化還元酵素(HAO)の新規な高感度蛍光HAO活性測定法を開発した。本測定法は、従来の吸光法と比較して感度が40倍程度向上している。さらに、高速処理に必須な384穴マイクロプレート用にダウンサイズし、ハイスループット薬剤スクリーニング法を確立した。開発した高感度蛍光HAO活性測定法は、精製酵素だけでなく、培養されたアンモニア酸化細菌、さらには、土壌に生息するアンモニア細菌からも直接HAO活性の検出が可能である。 10種類の阻害剤候補化合物とHAOの複合体についてX線結晶構造解析を行い、2種類の化合物(アセトアルドキシムとフェニルヒドラジン)のHAO複合体構造を決定することができた。基質構造をミミックするアセトアルドキシムはHAOの活性中心であるP460ヘム上に結合しており、阻害剤として機能することが示唆された。一方、フェニルヒドラジンは、アセトアルドキシムの結合部位に隣接した部位に結合していた。 上記の結果を基に、アセトアルドキシムの構造的特徴(水素結合ドナーとアクセプター)およびフェニルヒドラジンの構造的特徴(芳香環)をファーマコファとして、in silicoスクリーニングを行った。約475万化合物から数段階の絞り込みを経て、77種類のHAO阻害剤候補化合物を選抜した。購入することができた40化合物について上記の新規HAO活性測定法で阻害活性を測定し、50%阻害濃度(IC50)が43nMと非常に強力なHAO阻害剤を含む23種類のシード化合物を取得した。いずれの化合物も分子量が小さく、官能基を導入することができる部位も多いため、構造展開の余地が大きい有望なシード化合物である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本課題の目的は、農耕地で問題となっている窒素養分の流出や温室効果ガスN2Oの発生の解消に向け、その原因となるアンモニア酸化細菌のHAOを標的とする新規硝化抑制剤を開発することである。本年度は、プレートリーダーの納入が12月下旬となったことから、当初計画にはなかったin silico薬剤スクリーニングを実施し、新規な基質ミミック型HAO阻害剤のシード化合物23種類を取得することができた。このうち、精製酵素に対するIC50が43nMと非常に高いHAO阻害活性を持つ化合物は、生菌に対しても市販の硝化抑制剤に匹敵する効果を示した(IC50 = 2uM)。さらに、精製酵素だけでなく生菌についても利用可能な高感度蛍光HAO活性測定法を開発することができたことから、当初計画にはなかったセルベースの新規HAO阻害剤ハイスループットスクリーニングも実施することが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
X線結晶構造解析と計算科学的手法を駆使して、基質ミミック型HAO阻害剤シード化合物の構造最適化を行うとともに、ハイスループットスクリーニングにより多様な分子骨格構造を有する新規HAO阻害剤を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
In silicoスクリーニングで選抜した77種類のHAO阻害剤候補化合物のうち半数近くについては、年度末までの納入が見込めなかったことから購入を控えた。また、本年度成果の高感度蛍光HAO活性測定法の開発、並びに、新規HAO阻害剤の発見については特許出願を念頭に公表を控えた。これらのことから、消耗品費、旅費、論文投稿料において未使用金が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
新規HAO阻害剤候補化合物の購入と活性測定実験にかかる消耗品の購入、および、特許出願後の成果公表等に使用する。
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